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『Arménie: CHANTS LITURGIQUES DU HOYAN-AGE ET MUSIQUE INSTRUMENTALE アルメニアの音楽』

Arumenia no Ongaku アルバニアとアルメニアって、間違えませんか?僕は「バ」ルカン半島にある方がアル「バ」ニア、という覚え方を編み出すまで、ずっと混同しっぱなしでした(^^;)。アルメニアは、ザカフカス(南コーカサス)にある国です。コーカサス地方って、ロシアの影響の有無とか、イスラムか正教系かなどなど、色々ゴチャゴチャしてて分かりにくいです。昔、ザカフカス一帯がグルジアの天下という中、唯一キリスト教を受容したのがアルメニア。そして、ようやくアルメニアが勢力を広げた後でアゼルバイジャン人が勢力を広げてアゼルバイジャン国が出来…みたいな感じで、常に侵略の憂き目にあってきたのがアルメニアらしいです。こうした歴史が、音楽に思いっきり色濃く影を落とす事になったんじゃないかと。
 このCD、僕が持っているものはOCORA原盤の「Arménie: CHANTS LITURGIQUES DU HOYAN-AGE ET MUSIQUE INSTRUMENTALE」というものですが、日本語解説つきのものだと、キングが出した「世界民族音楽大集成」というシリーズの69番「アルメニアの音楽」がそれです。

 アルメニアの宗教音楽と器楽が半々ぐらいで収録されてました。前半の宗教音楽はアルメニアの歴史そのものといった感じで、正教会系の無伴奏合唱または独唱6~7世紀のアルメニアの作曲家にカトリコス・コミタスという有名な人がいますが、その人の作曲したものや編纂したものも含まれていました。これは超貴重。だって、コミタスのレコードって、いまだに一番重要な録音がLPのままですよね…。バッハですらせいぜい18世紀な事を考えると、これはヨーロッパ音楽の最深部にある音楽とっていいんじゃないかと。コミタスの作曲作を含め、アルメニアの宗教音楽は西ヨーロッパのそれと違って、悲しみに満ちあふれてる感じでした。聴いていて、死ぬ前に救いを求めるぎりぎりの祈りのように聴こえてきてしまうほどに悲しげ。コミタスは、キリスト教化の時に、単に聖歌を取り入れただけじゃなくて、それ以前からアルメニアにあった音楽とフュージョンさせたのかも。
 メシュロク・マシュドツ作曲の懺悔の歌も収録されていました。マシュドツは4~5世紀の人で、アルメニアのキリスト教受容のタイミングと一致してるので、もう最初の段階から「アルメニア」という確固たるアイデンティティがあったんじゃないかと。アルメニアの宗教音楽って、常に侵略し続けられ、そして宗教に救いを求めてきたアルメニアの心象そのものなんじゃないかなあ…。同じキリスト教でも、宗教の社会的意味合いが西欧と全然違うんだろうな、と感じました。これは本当に素晴らしい音楽。唯一残念だったのは、言葉の音楽だけに日本語訳をつけて欲しかった。。

 一方の器楽は、タール(撥弦楽器)やドゥドゥク(縦笛)やズルナ(ダブルリード楽器)あたりが入ってました。という事は、トルコ音楽やアラビア音楽の影響が強かったんじゃないかと思いました。そして、文化が混じっている感じ。打楽器の強烈な演奏はトルコっぽいし、細竿の撥弦楽器のものすごい弦楽器の即興はイラン音楽っぽいし、どこかやっぱりもの悲しいのはアルメニア調っぽいんです。色んな文化が流入してきたんでしょうが、それが日本みたいに丸コピーにならないのは、常に侵略者と地続きのところにいるもんだから、自分たちのアイデンティティが常に要求されて、何が入り込んできてもどこかアルメニア調になるのかも。

 見事な音楽。聴いていて、ずっと引き込まれ続けてしまいました。何度聴いても、そしてどれを聴いても、東ヨーロッパから南アジアにかけての民族音楽って、果てしなくすごい音楽だと思います。音楽の深度も演奏の熟練度も、ちょっとやそっとのプロ音楽では手も足も出ないレベルです。本当に感動して打ちのめされてしまいました。これは超おすすめです!

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Author:Bach Bach
狭いながらも居心地のいい宿で、奥さんとペット数匹と仲良く暮らしている音楽好きです。若いころに音楽を学びましたが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

ずっとつきあってきたレコード/CDやビデオの備忘録をつけようと思い、ブログをはじめてみました。趣味で書いている程度のものですが、いい音楽、いい映画、いい本などを探している方の参考にでもなれば嬉しく思います(ノ^-^)ノ

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