
オルガンの世界、チェンバロの世界、クラシックギターの世界…メジャーな室内楽編成やオーケストラから漏れた楽器の世界って、その世界にいる人じゃないと分からないだろうというほどマニアックな印象を持っています。ギターという楽器はロックやポップスの世界で生き残ったので、そこからクラシック・ギターの世界に入る人もいるから今も生き延びてるんじゃないかと思ってるんですが、それにしたってファリャやレゴンディの曲と言ってパッと思いつく人なんて、ロックやポップスのギタリストだって、いわゆる一般的なクラシック音楽のファンの人だって、そうそういないんじゃないかと。それぐらい、聴く専門家なんていない、自分でも演奏する人だけが知っているマニアックな世界なんじゃないかと。
このアルバムは
ジュリアン・ブリームの有名作で、僕は名盤ガイドで見て知りました。邦題は「スパニッシュ・ギターの神髄」、ヴィラ=ロボス、トゥリーナ、アルベニス、デ・ファリャという、近代のギター音楽の超メジャーな作曲家たちの作品集です。あれ?ヴィラ=ロボスって、ブラジルの作曲家じゃなかったっけ?なんで「スパニッシュ・ギターの神髄」というアルバムに入ってるんだ?ラテンという事でいいのかな、それともスペイン移民なのかな…分かりません(^^;)。
ジュリアン・ブリームは、トータルに見たらクラシックギターの中でいちばんすごい人、ギター演奏の革命者だそうです(友人のギタリスト談)。僕みたいな門外漢だと、クラシックギターといえば巨匠はセゴビア、もう少し後の人ならジョン・ウイリアムス、ビジュアル系だと村治香織…ぐらいしかパッと思いつかないんですが、友人のクラシック・ギタリストによると「セゴビアはすごいけどロックでいえばチャック・ベリーぐらいな感じ。ウイリアムスはフュージョンみたいなもんで、指先が動くだけで表現というものがぜんぜん分かってない演奏マシン。クラシック・ギターを聴くならまずはブリームだ」と言っていました。
このアルバム、はじめて買った22~3歳のころの僕にはよく分かりませんでした。
音がすごく遠くて、ロックでいう海賊盤みたいだと思ってしまったんですよね。恐らくそれが一番の理由で、名盤と言われているし、超有名プレイヤーの演奏だというのに、まったく感動できなかったんです。録音が62年と古い事もあるのかも知れませんが、クラシックギターってこういう音のCDがけっこうあるし、ちゃんとホールの音を再現すると、実際にこういうものなのかもしれないし、これがい正しい音とされてるのかも知れませんが。
でも、印象に残った事がありました。「へえ、クラシックギターに、こういう感じの音楽があるのか」という事でした。まったく無知な僕は、クラシックギターというと「禁じられた遊び」かバッハみたいな、保守的で面白みに欠ける音楽と思ってたんです。ところが、
ヴィラ=ロボスやアルベニスの曲は、自分がイメージしていたクラシック・ギターとはまるで違う世界観で、驚きの世界だったのです。
また、こうした曲をブリームさんは丁寧にメカニカルに演奏するのではなく、えらく歌わせて演奏していました。この「クラシック・ギターを歌わせる」ところが、ブリームさんの革命的なところだったのかもしれません。趣味でギターをちょっとだけ弾いてみる時があるんですが(ムズカシくてとても弾けるなんてものじゃないですが^^;)、クラシック・ギターって、バスと和声と旋律を同時に演奏するので、歌わせるなんて夢のまた夢。楽譜どおり演奏できるだけでも神技のように思えちゃうんです。それを、こんなに歌わせるのは、曲だけでなくプレイヤーの天才なんだろうな…みたいな。
というわけで、ぜんぜんピンとこなかったけど、クラシック・ギターの世界にも、ジュリアン・ブリームにも、何かがある…そんな事を感じて、僕にとってのクラシック・ギターとジュリアン・ブリームの入り口となった1枚でした。もう、大昔の事です。
- 関連記事
-
スポンサーサイト