
これほど評価の高いプレイヤーなのだから、さぞかしすごい音楽をやってるのではないかと、
ソニー・ロリンズのレコードを7枚も8枚も買った若い頃の僕でしたが、そのほとんどは合衆国のポピュラー曲の上でアドリブ演奏するだけのものでした(^^;)。サックスを演奏する人が聴いたら凄いのかも知れませんが、
チャーリー・パーカーや
ジョン・コルトレーンみたいに「熱い!速い!チェンジが強烈!」という分かりやすい凄さじゃないので、僕には良さが理解しきれなかったのでした(^^;)。
とはいえ、ロリンズはそこまで商売に割り切った職業ミュージシャン気質の人ではなくて、ジャズが本当に好きで、ひたすら練習していた人だった気がします。そんなロリンズさんでも、ハードバップの時代が過ぎて、コルトレーンが『至上の愛』、オーネットが『ゴールデン・サークル』を発表し、サードストリームやニュージャズやフリーや新主流派なんてものまで出てくる時代となると、いまだAABAでドミソシなエンターテイメントなアメリカンソングを大らかに吹いてていいのかと思った…かどうか分かりませんが、とにもかくにもロリンズさんの発表したアルバムの中で、いちばんの大作でありアーティスティックでもあるのが、このアルバム。1966年録音、メンバーは、ジミー・ギャリソン(b)、エルヴィン・ジョーンズ(dr)、
フレディ・ハーバード(tp) というわけで、思いっきりコルトレーン・バンドです(゚ω゚*)。
1曲目「East broadway rundown」は、ロリンズ作曲の20分ごえの大作です。ペットと一緒に奏でるテーマは、オーネット・コールマンとドン・チェリーのテーマの作り方にそっくり。どうやればハードバップから脱却できるか、懸命に研究したんでしょう。以降の
アドリブもかなりニュージャズ的で、フレージングがハードバップやってた頃とは違います。曲もコーラス形式にはしておらず、ベースのソロでは全員演奏を止めてテンポも変え、展開部も用意してあって、随所に工夫があります。
これはロリンズ生涯の大作じゃないでしょうか! 今から見れば、これがロリンズさんらしい作品かといえば、ちょっと疑問です。でも、5年も10年もハードバップだけ演奏してるだけだったら、それこそ時代遅れの演歌歌手のようになっていたかも。良い音楽を目指すなら、その上を目指す挑戦がない方がおかしいですよね。
けっきょくロリンズさんはこの後にハードバップ的な音楽に戻ってしまいましたが、それだけにこのレコードは貴重。音楽全体を見ればロリンズ最高傑作、オーソドックスなジャズが好きなジャズ保守派層には最悪の1枚かもしれませんが、
僕的にはロリンズの作品の一押しは、これか『橋』のどちらか、それぐらい好きです(^^)。
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