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書籍『パウル・ツェラン詩集』 飯吉光夫訳 小沢書店版

PaulZeranSishuu_OzawaShoten.jpg 翻訳者も書籍タイトルもまったく同じですが、思潮社と小沢書店の『パウル・ツェラン詩集』は、かぶってるところもあるものの、編集方針が違うものでした。小沢書店版の特徴は、ツェランの初期詩集に特化している事と、詩だけでなくエッセイ、それに他の人が書いたツェラン論も収録されている事です。

 若い頃は、ツェラン独特のレトリックやメタファーに痺れていた僕ですが、正直言って何を言っているのかはよく分かっていなかった気がします。でも、ツェランがナチス政権下のドイツに生きたユダヤ系ルーマニア人で、両親が強制収容所に送られたまま消息不明になった事を知ったうえで読むと、いったいこの詩が何のメタファーなのかが分かる気がしました。そのうえで、良いと思った詩をあげると、初期詩篇では「アルテミスの矢」「翼の音」。詩集『閾から閾へ Von Schwelle zu Schwelle』からは「ここ」「沈黙からの証しだて」。散文では「山中の対話」が、心に来るものがありました。ちょっと抜粋すると…

鳩はそれもアヴァルンにたゆたっている。
そのため、あなたの腰の上方の、半ば心、半ば鎧である一羽の鳥は闇にとざされる。
(中略)わたしはそれでも鳩が、白い鳩が、やってくるのを見る、アヴァルンから。 (翼の音)

ここ―それは、わたしがそれに乗って砂の河を遡ってきたあの船のこと、
―その船は舫われたまま、あなたが撒いた眠りの中に浮かんでいる。 (ここ)

ぼくは、いとこよ、その蝋燭を愛していたのではない、ぼくが愛していたのは、その蝋燭が《燃えつきること》だった。そしてそれからというもの、わかってくれるだろう、ぼくは何ものをも愛していない。 (山中の対話)


 こんな感じで、厭世観を感じるというか、近い時代で言えばドイツというより、サルトルやカミュのようなフランス系の実存主義が持ている虚無感みたいな。「ここ」なんて、私は死んだ人間で、こことは彼岸の事なのでしょうしね。

 他の人が書いたツェラン論。ブランショなんかが書いていましたが、各論みたいでこれはあんまり参考になりませんでした。むしろ、訳者の飯吉さんによる解説が見事で、そっちに感銘を受けてしまいました。詩や散文や外国文学って、コンテキストもものすごく大事なので、解説って大事ですよね(^^)。

 そんなわけで、さすが詩人だけあってレトリックやメタファーの使い方はすげえな、と思ったんですが、ちょっと厭世的で、その重さがきつかったです。でも、両親がそんな死に方をして、自分もすれすれのところを生きてきたんだから、そうなるなという方が難しいのかも知れません。

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Author:Bach Bach
狭いながらも居心地のいい宿で、奥さんとペット数匹と仲良く暮らしている音楽好きです。若いころに音楽を学びましたが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

ずっとつきあってきたレコード/CDやビデオの備忘録をつけようと思い、ブログをはじめてみました。趣味で書いている程度のものですが、いい音楽、いい映画、いい本などを探している方の参考にでもなれば嬉しく思います(ノ^-^)ノ

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