『ルービンシュタインpf / ショパン:ピアノ協奏曲 第1番、第2番』

Chopin_Concerto1_2.jpg ピアノ協奏曲つながりで、シューマンに引き続きまして、ショパンのピアノ協奏曲を。

 クラシックのレコードって、「歴史的録音」なんて呼ばれるものがありますよね。僕はコレクターではないので、どのあたりの物からをそう呼ぶのか分かりません。しかし、録音テープの都合なのか、機械が古いからなのか、音が滲んだような感じになってしまっているレコードは、僕の中では歴史的録音という事になっています(^^)。で、この「歴史的録音」というものにはいい所もあるんですが(例えば、伝説の巨匠の演奏が聴けるとか…)、僕にとってはマイナス面が大きすぎて、聴く気になれない事がほとんど。何がマイナス面かというと…ダイナミックレンジが狭すぎるし、音の再現性が悪すぎるのです。
 ヴァイオリンやピアノなどのクラシックの演奏を学んだ事のある方なら分かると思うのですが、楽譜には演奏の強弱を示す記号とか、速度変化を示す記号、音色を示す指示なんかがいっぱい書いてあります。僕はそこがジャズやポピュラーと一番違う所だと思うのですが、クラシックの場合、この手の表現の部分に相当な要求が比較にならないぐらいにびっしり書いてあります。書いてなくても、演奏者はそこをどう表現すべきか、楽譜から読み取ろうとするし、自分で書き込みます。ピアノの演奏を聴くと、同じショパンを演奏しても、クラシックの素養のある人が弾いているのか、それともジャズやポップスのピアニストが弾いているのかは、簡単に分かります。ジャズなんかの人は、和声をひとつの塊として(つまり和音の音色として)演奏します。一方、クラシックの人は、旋律パートと対旋律パートやバスパートの関係などから、音の強弱を選び出すように考えます。だから、ある瞬間に4つの音が鳴っているとしても、それらを全部同じ音量で弾き揃えるなんてことはまずありません。すべての音に序列があって、どれが大きい音でどれが小さい音で…という感じで、それぞれの音の強さや大きさの関係性が崩れるという事はありません。クラシックのロマン派音楽の場合、更に表現は音が聴こえるかどうかという小さい所から、音楽的である事の出来るギリギリの最大音までを使う事になったりするので、更にその表現の幅は広がります。ところが…「歴史的録音」になってしまうと、ピアニストが弾き分けたであろう音が潰れてしまって同じ音色や音量に聞こえてしまったり、フォルテとフォルテシモが潰れてしまって同じ音量になってしまったりと、演奏家が一番腐心したであろうその表現の部分こそが、録音によって失われてしまったように思えるものが多すぎるのです。

 前置きが長くなりましたが、この録音です。巨匠ルービンシュタインの演奏によるショパンのピアノ協奏曲で、録音は1961年と68年。一般的に言えば歴史的録音ではないという事になるんでしょうが、しかしモダン録音にも届かない感じ。両者の中間ぐらいですかね。で、それがどうなのかというと…なんか、いいんですよ(笑)。音は滲んでしまっているんだけど、しかしアナログ録音独特の温かさと言えなくはないし、こういう音が好きだからクラシックをLPで聴きたいという人も多いと思うんですよね。あの、アナログ録音の良い側面が出ている感じなんです。それでいて、強弱や音色の表現が潰されてしまっているかというと、そこは残っている感じ。こういう事をいってしまうと、もう「個人の趣味じゃねえか」と言われてしまいそうなんですが(^^)、しかしこのバランスが僕には素晴らしすぎる。
 で、これを素晴らしいと思う理由は、他のショパンのピアノ協奏曲の演奏と、ルービンシュタインのそれとの差にも出ているんじゃないかと。リストとかショパンとなると、技巧をイメージする人が多いと思うんですが、ピアニスト本人も同じ思いがあるんじゃないかと思います。というわけで、ショパン演奏というと、華麗でテクニカルな演奏が多い。でも、それがあまりに華麗にし過ぎようとする嫌いがあるというか、そのために大事な部分が失われてきてしまったようにも思えるのです。例えば第1番なんて、音楽的にはどのように演奏すると、いちばん良い音楽になるんでしょう。ショパンのあの耽溺するような音楽性も失わないでほしいと思ってしまうんですよね。そう考えた時に、テクニカルにバラバラと弾きまくる演奏ではなく、このルービンシュタインの演奏のように、ひとつひとつの音の意味付けを丁寧に突き詰めていった演奏の方が、遥かに音楽としての完成度が高いんじゃないかと思えてしまうのです。

 せわしない僕の今の生活では、シンフォニーやコンチェルトは、週末ぐらいしか聴く余裕がありません。週末でも、心を落ち着けて、アタマがすっきりした状態で、時間を十分取って…と、かなり準備しないと聴くことが出来ません。しかし、そうした万全の準備をして、ルービンシュタインのコンチェルトに耽溺して、聴き終わった時にはいつの間にか日が落ちて部屋が暗くなっていて…こういう時間を生きた瞬間こそ、僕は「生まれて良かった」と思える瞬間なのです。1本1本の指の強弱の順列にまで気を遣い、考え抜いた音楽演奏というものを知ってしまったら、まったく間違えずにすごい速さで演奏していたとしても、それが平坦なものであったら子供っぽ過ぎて聴く気になれなくなってしまう。ルービンシュタインがちょっと間違えているとか、そんなのは大きな音楽表現の前では、大した問題ではないのです。これぞ表現、歴史に残るピアノ協奏曲の中でも、ベスト3に入る演奏なんじゃないかと思います。



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 今月号のintoxicateに載っていた1枚。「Vyacheslav Artyomov」、ロシアの作曲家は名前が読めなくってムズカシイ。。「ヴャチェスラーフ・アルチョーモフ」と読むらしいです。伝説の「フレンニコフの7人」のひとりとの事ですが、それって何かすら僕は知らず(^^;)。作風的には初期は新古典的、後に民族的な様式、十二音技法や、複調性、ミニマルなんかも用いたみたい。ロシアの前衛は強烈なものが多いので、聴いてみたいです。アマゾンで買おうと思ったらダウンロード版しかなかった(;_;)。 少し前に取りあげたエリザベス・コットンですが、ライブ盤なんてあるのか?!これは聴きたい… オスマン時代から現代までのトルコ音楽のガイド本みたいです。おおお~、これは絶対に読もう!! レコ芸に載っていた近藤譲さんの新譜、室内楽作品集みたい。好きな作曲家なんで聴きたいんですが、持っている2枚のALM盤と4曲かぶってるので悩み中…
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