
1980年代のなかばに、週刊少年ジャンプに連載されていたラブコメ漫画です。僕は中学のクラスでの漫画雑誌の回し読みで読んでいた程度で、語れるほどには詳しくないですが、でも漫画雑誌が回ってくれば優先して読むぐらいには好きでした。
主人公は超能力を持った中学生の男の子・恭介。彼が、不良で頭がよく運動神経抜群の美人の同級生・鮎川まどかに一目ぼれ。一方、まどかを慕う中学生の後輩・ひかるは恭介に一目ぼれ。この三角関係を軸に、ラブコメが展開していきます。
三角関係、自分のことを一方的に好きになってくれるちょっとエッチな学年でいちばんの美人同級生…以前、
『翔んだカップル』というラブコメ漫画の感想を書いたことがありましたが、フォーマットが完全に同じです。これはライバル誌の少年マガジン連載『かぼちゃワイン』も、サンデー連載『うる星やつら』もそうだったので、少年漫画のラブコメの基本フォーマットだったんでしょうね。でも、『きまぐれオレンジ☆ロード』は、『翔んだカップル』や『かぼちゃワイン』とは何か違う印象でした。それはたぶん時代のコンテキスト。
『翔んだカップル』は、極端に言えばスポ根の価値観がまだ少し残っていた時代の恋愛観であって、『オレンジロード』はトレンディ・ドラマの時代の恋愛観。あまりガツガツと来ないフワッとした雰囲気でした。『翔んだカップル』の時代だったら、フワッとでは終わらず、三角関係で自殺者が出たり、親友と殴り合いになったりして、話が強く進行していくと思うんですよ。もうちょっと前の
『愛と誠』なら更にそうで、恋愛で死者が出るわ殺し合いが始まるわ、みたいな(^^;)。でも80年代半ばになるとそうはならず、よく言えばスマート、悪く言えばハングリーさのない「女性の発言権が強い」恋愛文化になっていました。女子大の卒業式に彼が迎えにきて校門の前に車がずらっと並んでるとか、クリスマスは若い恋人の予約でホテルが一杯でその金は男が出すとか、そういう時代。女性優位だったんですよね。
そういう「男にとっては面白くなかった時代」に、ティーンエイジャーな男子にとってのご都合主義でうれしい漫画が、『きまぐれオレンジ☆ロード』だったんじゃないかと。硬派が通じない時代になり、まだ彼女が出来た事のない不安いっぱいな中学生男子にとって、「美人が勝手に向こうから好きになってくれる」「何をやっても受け入れてくれる」は、恋愛における最高のファンタジーだったんじゃないかと。
オレンジロードのフワッとしたファンタジーなムードは、作画にもあらわれていました。ポップで奇麗で、女の子がリアリティ追及の劇画調ではなくポップアートのように描かれ(ヒロインは中森明菜のイメージなんだろうな…)、スクリーントーンを三角に切って貼ったり、登場する喫茶店が出窓で白い壁のリゾートペンションのようだったり…作画もやっぱりファンタジーでした。
80年代中ごろは、ポップなパステルカラーが流行していて、時代もバブル絶頂期。70年だったら、彼女とディズニーランドでデートなんて、男にしたら「幼児趣味で人に言えない」感じだったのではないかと思うんですが、この頃はそれがあこがれのようにもなり、現在にまでつながる日本の精神年齢の幼児化が始まりだったんじゃないかと。でもそういったぬるま湯なファンタジーは、それなりの心地よさもあるんですよね、そこに浸りすぎると現実とのギャップに苦しむかもしれないけど。
当時のポップでウキウキするファンタジーの雰囲気が、『きまぐれオレンジ☆ロード』にはありました…って、半分も読んでない人間の感想なので、あまり信じないでね(^^;)。
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