
僕が子どもの頃にオカルトブームが起きました。映画でも
『オーメン』や『エクソシスト』といったオカルト映画が大流行。テレビでも心霊番組が大人気。本屋に行けば
心霊写真集がいっぱい置いてありました。フォトショップなんてものがこの世にあるなんて知らなかった小学生の僕は、超常現象的な意味でのオカルトを本気で信じてました(^^;)。。そんなオカルトブームの中で「恐怖新聞」というオカルト漫画が流行、これがマジで怖かった。。その漫画の中に、「
モーツァルトは正体不明の依頼主からレクイエムの作曲を依頼され、書き上げて死んだ。モーツァルトは自分のためのレクイエムを書かされたのだ」なんて一節があったのを覚えています。他にも、モーツァルトはフリーメーソンという秘密結社のメンバーだったとか、オカルト本でいろんな話を読んじゃったもんだから、僕にとってモーツァルトのレクイエムは、聴いたら呪われるんじゃないかというほどビビッてしまい、ずっと聴く事が出来ない音楽だったのでした(^^;)。さて、そんな僕が最初に聴いたモーツァルトのレクイエムがこれ。ベーム指揮ウィーンフィル演奏、1971年録音です。
今ではこの曲の本当の依頼主が分かっています。ついでに、この曲を書きあげる前にモーツァルトは他界してしまったので、「自分の葬儀に間に合った」というのも嘘です。
モーツァルトが自分で書き上げたのは、11の部分からなるこの曲の最初のふたつだけで、あとはスケッチ程度。未完部分は弟子が書き上げています。なんだよ、それをモーツァルトの作品なんて言っていいのか…と思いきや、これがメッチャ素晴らしいのです。モーツァルトというと交響曲を書いてもほとんど長調で書き上げるし、軽やかで貴族趣味な音楽が多いので、レクイエムの作曲なんていかにも似合わなそうで聴けたもんじゃないんじゃないと思っていたのに、とんでもありませんでした。いや~これは素晴らしい。
僕がモーツァルトの曲で一番好きなものって、これかも知れません。
音楽的にも素晴らしい所が目立ちます。混声合唱でカノンを形成する部分、途中で調が錯綜してマイナーへとコンバージョンする曲、二重フーガの曲…厳かな曲調だけでも圧倒されそうですが、よく聴くとめっちゃよく出来ています。ウィーン古典派って、やっぱりすごい。
でも、僕が最初に感動したのってそういう部分ではなく、この演奏の説得力だったかも。理屈はよく分からないまま、圧倒されたんです。このCD、録音も演奏もめっちゃ素晴らしくて、響きはリッチだし、かといってボワンボワンになる事なくファーストヴァイオリンとかすごくハイ抜けがいいし、それでいて音が太い!素晴らしいです。演奏も非の打ちどころなし、オケだけでなく合唱パートの見事さと言ったらもう…。というわけで、
様式の見事さより先に、音楽の質感や演奏の迫力にやられたのでした。あんまり感動しちゃったもんで、他の指揮者やオケの演奏や録音を聴こうという気にまったくならず。さらに、僕がめっちゃ信用していたアマデウスマニアの同級生が、「
モーツァルトの管弦を聴くならベーム指揮のものを買っておけば間違いない」な~んて言っていたので、なおさら他を聴く気にならず(^^)。というわけで、僕にとってのモーツァルトのレクイエムは完全にこれになりました。他と比較していいとか悪いとかは、聴いてないのでまったく言えないんですが、僕にとっては必殺の1枚です!
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