
ひとつ前の記事で書いた「野獣死すべし」のメインテーマですが、ジャズバンド・ウィズ・ストリングスという編成で、メインテーマはトランペット。トランペットの哀愁ある音色やメロディをストリングスが支えた瞬間を聴くだけでもう鳥肌モノ。しかし「野獣死すべし」より先に、僕はジャズ・トランペットwithストリングスの悦楽を知っていたのでした。それが、子供の頃、テレビの「水曜ロードショー」という番組のオープニングで流れていた音楽。夕暮れのヨットハーバーで、夕陽に照らされた海がオレンジ色にキラキラしていて、船から手綱が投げ入れられて…みたいなオープニング。その後ろで流れていた、何とも言えない美しい音楽。子供の頃の僕は、あの音楽を聴いて「なんて美しい曲なんだろう」と思っていました。オープニングでは何のクレジットも出ないので、誰の演奏で、何という曲かも知らないまま、オープニングの曲が変わってしまい、そのまま月日が流れてしまいました。
それから10年ぐらい後でしょうか、大人になり、音楽の仕事をしている時に、ふとした会話の中でその音楽の話になりました。すると、ご年配のレコーディング・エンジニアの方が「ニニ・ロッソじゃないの?」と教えてくれました。だ、誰だそれ??しかし、長年の謎が解明したかも知れないと思った僕は、その人のレコードを調べ、ベスト盤みたいなものに入っている曲の中から「水曜の夜」というタイトルの曲を見つけることが出来ました。これに違いないだろう…。しかし、もしこれだとしたら、水曜ロードショーの為にわざわざ作った曲だったのか。ジャズかなんかのすたんだーと・ナンバーかと思っていました。。で、早速購入して聴くと…
これだああああああ!!! 子供の頃、映画というのはなんて面白い物かと思っていました。でも、映画を見に行くことが出来るのなんて、年に1回ぐらい。そんな素晴らしい映画が、テレビでは毎週見る事が出来るんですが、放送が夜の9時からというのが大ネック。「子供はもう寝なさい」という時間なんですよね(>_<)。だから、「この映画だけは見せてくれ!」というやつだけ、親に必死に頼み込んで、何カ月に1回ぐらいだけ見るので精いっぱい。そんな時に、ワクワクしてテレビの前で待ち構えていて、流れるのがこの音楽だったのです。ブルース・リーもルパン3世もジャン・ギャバンも、僕はこのテーマを聴いた後に体験していたのです。あの夕暮れのヨットハーバーの景色と合わせて、そういうワクワクした体験が、この音楽には集約されて記憶されているんですね、僕の場合はきっと。
さて、僕はニニ・ロッソという人をよく知りません。ムード・ミュージックのオーケストラの人気ソロイストか、劇伴作家兼トランぺッターみたいな所なんでしょうか。ハイノートも綺麗に出すので、実は結構うまい人なんじゃないかという気もしますが、ジャズのような派手なソロは聴いた事がありません。でも、この「水曜ロードショー」のテーマソングだけで、僕には十分の1枚です。
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