タネを明かすと、他のブルースとは、実際に使っているコードとか、コード進行に当てている代理進行とかが違うんですよね。ムズカシイ話にしてしまうのは好きではないので簡単に言うと、例えばコードでいうと9thとか6thなんていうエクステンションを加えてきます。で、暑苦しい系のブルースだと、こういうコードは使わない。なぜ使わないかというと、趣味で使わないんじゃなくって、多分知らないんですよ。しかし、こういうコードを使えるというのは、Tボーンという人、実は少しだけジャズの素養があったんじゃないかと。ただし、旋律はペンタトニックから外れる事はほとんどないので、じゃあジャズが演奏できるのかというと、そこまでは行けていないのかも。9thとか6thというコードって、サウンドが複雑になって、感覚でいえばマイルドになるんです。それは、モダンに聴こえて当然なんですよね。こういうサウンドは、エリック・クラプトンなんかも使う時があるので、洗練されたシティバンド・ブルースのルーツにあるのは、このティーボーン・ウォーカーさんなんじゃないかと思っています。2曲目の"Mean Old World" なんて、モダンブルースを演奏する人で、この曲を知らない人なんていないんじゃないかというぐらいの大名曲。詞の世界観も素晴らしいし、イントロのギターの和声進行なんて、当時のブルース・ギタリストに衝撃を与えたんじゃないかと想像します。