チャーリー・パーカーや
ディジー・ガレスピーが驚異の即興演奏を聴かせたビバップの大ブームの後、ジャズは知的でエレガントなウエスト・コースト・ジャズの時代へ。爆発的な演奏を聴かせるジャズの時代は短命に終わったかと思いきや、今度はアメリカ東海岸からハードバップの波が!このレコードは、ハードバップの名コンボ、
ブラウン/ローチ・コンボの(たぶん)いちばん古い録音で、1954~55年録音。レーベルはEmArcy…そういえば、エマーシーのジャズヴォーカルものでもブラウニーはペット吹いてたなあ。エマーシーの看板プレイヤーだったんでしょうね。ブラウニーが演奏しているというだけでレコードが売れる、みたいな。
ジャズを聴き始めてしばらくした頃(17歳ぐらい?)、50年代のアメリカ東海岸でブームになったハード・バップやファンキー・ジャズは退屈な音楽だと思ってました。名盤といわれるものを聴いても、どれもいまいち。アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズ
『モーニン』、ソニー・ロリンズ
『サキソフォン・コロッサス』、キャノンボール・アダレイ
『枯葉』、マイルス
『バグズ・グルーヴ』…どれもこれもテーマ吹いたらあとはアドリブのワンパターンで、曲として面白くなかった…。そして、ハードバップの売りとなっているアドリブも、そこまで有難がるほど凄いものとは思わなかったんです。もう少し後のコルトレーン『至上の愛』とか、マイルス・デイヴィス
『プラグド・ニッケル』あたりの方が全然すごいと思ったんです。だから70年代生まれでモダンジャズ後追いの僕にとって、ハードバップは温故知新の音楽…そう思っていたんです。ところがクリフォード・ブラウン&マックス・ローチの演奏を聴いてぶっ飛んだ!!なんだこれ、演奏が凄すぎる…マイルスやブレッカーが子供に思えてしまうほどのキレ味、興奮しまくりました!
音楽自体は普通のハード・バップで、退屈なほどシンプルな構造です。ところが
演奏のキレが凄い…。まだロックを普通に聴いていた頃だったもんで、ライドでリズムをキープして、後はみんなおかずのマックス・ローチのドラムにビビった!今となってはジャズ・ドラムの基本中の基本のようなドラミングですが、ロックと比べれば曲の最初から最後までドラムソロみたいなもので、感激したのです。難しいコンビネーションがどうとかいう事じゃなくて、右手以外のすべてがアドリブな所が凄い。これを知ってしまったもんだから、フュージョン時代の手数がやたら多いドラマーを聴いても、それが決められたコンビネーションだとぜんぜん面白くないと感じるようになったほど。ついでにドカーンと来た時の押し潰すような圧力がすごくて、本当に持っていかれてしまいました。
そして、ブラウニーの演奏。クリフォード・ブラウンの演奏は他のアルバムでさらにぶっ飛ばされる事になったんですが、このアルバムの演奏も素晴らしかった。このアルバムではそこまで高速プレイや火の出るようなソロは聴かせてないんですが、キレが凄い!なんなんでしょうね、タンギングなのかな、アクセントがパンパン入るリズム感のキレの良さなのかな…僕はペットを吹かないのでうまく説明できないんですが、とにかく切れ味が凄い。ローチがこん棒でぶん殴ってくる感じなら、ブラウニーは日本刀でスパッと切ってくる感じ。
な~んて感じで誉める言葉しか出てこないハード・バップの切り札コンボのデビュー・アルバム。でもブラウン=ローチ・クインテットの凄さはこんなもんじゃない、まだまだ強烈なアルバムがあったりして(^^)。とはいえ、モダン・ジャズを聴くならブラウン/ローチのアルバムは全部買っても損しない名演揃い、この第1作も間違いなく名作と思います。まだ聴いてない人はぜひ!!
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