バルトークの弦楽四重奏曲の1~2番が入ったCDです。若い頃の僕はバルトークの弦カルが好きすぎて、色んな弦カルが演奏したバルトークのCDを持ってました。で、いろいろ聴き比べた結果、
アルバン・ベルク・カルテットの演奏に優るものなし、他の弦カルのCDは売ってしまいました(^^;)。若かった僕はお金がなかったので、分売されてるCDを1枚ずつ買って全部揃えましたが、今では1~6番全曲をまとめたCDが安く出てます。リスナーにとっては良い時代になったなあ。
第1番は1910年ごろの作曲で3楽章形式、音楽はロマン派的です。ロマン派と言っても印象派的な(当時にすれば)新しい和音や、神秘主義突入直前のような半音階の使用などなど、もうスクリャービンとか
シェーンベルクの無調突入直前みたいな雰囲気。しかも4本の弦の絡みが精緻で、単純な機能和声や伝統的な形式に還元出来ない音楽、すごい。バルトークの弦カルは3番以降が強烈に凄いんですが、1番も間違いなく傑作だと思います。バルトーク以外の作曲家だったら、代表作となっていてもおかしくないほどの素晴らしさ。これを28歳で書いたのか、大作曲家はレベルが違うな。
第2番は1915-18年あたりの作曲で、これも3楽章制。1番よりこっちの方が古い作品に感じるほど、後期ロマン派的に感じました。でも、民族主義や新古典への萌芽もあるのかな?といっても、
R.シュトラウス「変容」とか
シェーンベルク「ピエロ」みたいな意味でですが(^^;)。サウンドの斬新さや弦の構造の複雑さに惑わされそうですが、第1楽章なんてよく聴くとソナタですしね。2楽章が1楽章と対照的で、
ストラヴィンスキーの原始主義音楽的。弦カル版「春の祭典」みたいで、リズムがザクザク。ここまでだったら「どんな既存の技法でも使える秀才肌の作曲家」で終わったかもしれませんが、2番でヤバいと思ったのは最終3楽章でした。例えば、AとG#を鳴らしながら、途中でG#がFに変化します。こういう微小音程の衝突が連続した上に、これが基本音型となってこの変化で構造が編まれていく…すげえ、音楽がシェーンベルク的と感じました。それでいてコーダ部分は四度和音。1915-18年の時点で、こうした技法を用いてどういう音楽を書くかという所の答えまでたどり着いた曲に聴こえます。僕のレベルではこの曲の構造が1回ではつかめず、何回か聴いてしまいましたが、少し分かっただけでもこれは本当にすごいと感じました。これ、分析すればもっともっといろいろあるんだろうなあ…。
バルトークとストラヴィンスキーは、新古典主義の作曲家みたいな言われ方をする時がありますが、実際には時代によってかなり違う音楽を書いてます。どちらも最初はロマン派的、次に新古典、そしてセリー音楽に近づいた時代があり…みたいな。弦楽四重奏の1~2番は、区分けでいうとバルトークのロマン派時代の作品という事になりますが、その中で代表作のひとつと言っていいんじゃないかと。
- 関連記事
-
スポンサーサイト