
ポール・ニューマンとロバート・レッドフォードの共演した映画では、
『明日に向かって撃て!』もいい映画でしたが、僕がいちばん好きなのは『スティング』です!
すべてのアメリカ映画の中でも上位に入れたい大フェイバリット映画、超がつくほどの面白さ!はじめてみた時の爽快感と感動は鮮烈で、今でも忘れられません。シカゴに生まれてみたかったと思ったほどの入れ込みようでした…実際にはギャングがいたりして、タフでないと生き残れない世界なんでしょうけどね(^^;)。
1930年代のシカゴで、コンビを組んで詐欺を働いていたふたり組が、思わぬ事から大物マフィアの売り上げに手をつけてしまいます。それが原因で、ひとりはマフィアに殺されてしまいます。残されたフッカー(ロバート・レッドフォード)は、シカゴの超大物詐欺師のゴンドーフ(ポール・ニューマン)の元に行き、殺された相棒の仇討ちの相談をします。マフィアのボスからあり金すべて巻き上げる壮大で痛快な詐欺が、ここから始まります。
この映画、最初から最後まで面白いんですが、僕が面白いと思った所は大きく分けてふたつ。ひとつは、
詐欺やトラップの描写で、これが見事!いちばん大がかりな詐欺は競馬の詐欺で、電波を遅らせて情報を伝え、そのタイムラグを利用して勝ち馬を先に知るトリックなんですが、最初に見た時はこのトリックの巧妙さに感動してしまいました。他にも、お金を渡したふりをして紙束を握らせる「すり替え」、いかさまカードでカモりに来た相手を逆に嵌める、追って来たFBI自体が詐欺グループの一味など、
見事なトラップやどんでん返しの連続。ぼんやり見てると何が起きたかすら分からなくなる見事なスティングで、これを見るためだけでも楽しい映画です!
もうひとつこの映画でシビれたのは、中年の詐欺師ゴンドーフの生き方です。伝説の詐欺師ですが、もう齢を取ったし、ある程度の食い扶持は確保したので、マフィアの大物をだますなんていう危険な事をしなくても生きていけるんです。でも、なぜまだ詐欺をやるか。フッカーは殺された相棒の仇討ちのためと言いますが、ゴンドーフの答えは、「
やるだけの価値がある仕事だから」。なんと深い考え方だろうと思いました。マフィア相手だと、ミスしたら殺されます。それでも相手から大金を巻き上げる事にかける判断がなぜ出来るか。まず、失敗したら死ぬという覚悟があるのでしょう。
この映画の舞台は30年代のシカゴですが、株で億万長者が次々に生まれると同時に、世界恐慌で没落して自殺する人が後を絶たなかった時代でもあります。それ以前の「独立独歩で努力して生き抜く」というフロンティア・スピリットが、いつの間にか享楽的で楽して稼ぐみたいな考え方になっていき、次第に何が正義かを見失っていった時代です。この時期のアメリカ文学が厭世観に溢れているのは、このあらわれなんだと思います。自分が信じられる強い正義が亡くなってしまうと、どうせ死ぬのに何でがんばるの?何をがんばるの?みたいな意識があって、それが下に向かうと「どうせいつか死ぬなら」になって、上に向かうと「どうせ死ぬ以上は」になるんじゃないかと。ゴンドーフがカッコいいのは、これを意識できていて、分かった上で
自分に出来る最大のリスクとリターンを求める生き方をしているように見えたからでした。
「どう生きるか」という所で感銘を受けたから、僕にとっての映画「スティング」は単なるエンターテイメント映画に終わらなかったのでした。まあ、失敗したら詐欺師が野たれ死にしただけでおしまいなので、成功するからカッコいいんですけどね。。
こんなに知的で痛快な映画もなかなかないのでは。観てない人は死ぬまでに一度は見て欲しい最高の映画でした!!
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