
19世紀から20世紀初頭に全盛をむかえた
イタリア・オペラの作曲家といえばヴェルディとプッチーニ!ヴェルディの方が先だし、イタリア・オペラを世界的に有名にしたので圧倒的に有名かと思いますが、音楽的にはプッチーニの方がかなり高度に感じます。プッチーニの頃には
フランクも
ドビュッシーも登場してますし、和声がかなり進化してすごいのです^^。そして、聴く前は「なんだかんだ言っても芝居音楽。しかも享楽的なイタリアだし、題材もあれだし」と思ってたのに、この
「蝶々夫人」には序曲を聴いただけでノックアウトされてしまったのでした。和声も書法も一気に豊かになった時代を反映した見事なスコア、パヴァロッティやフレーにセンターに据えたカラヤン&ウィーン・フィルの演奏の素晴らしさ、そして
録音がめっちゃくちゃいい!!いやあ、欠点がないなんてものじゃなくて、いい所しかないCD、これはすごかったです。
蝶々夫人を聴いてまっ先に耳に飛び込んできたのは、ある意味で印象派的な豊かな和声と、音も台本も含めて感じるオリエンタリズムという志向でした。どちらも当時のヨーロッパ文化の傾向のひとつですが、自文化を常に優位に、そして中心に考えるヨーロッパが、好奇心からの異国情緒であったにせよ外に向かって目を開いたのは、西洋音楽の大進歩だったんじゃないかと。違う文化から素晴らしいものがドバっと入ってきて、それを自国文化と融合して、新しいだけじゃなくていいものがどんどん出てきた時代なんですよね。新しい試みだらけなので、模倣に陥らずにそれぞれの作曲家が創意工夫を凝らし、次第に創造的な作品を作ることが必然的になっていく、みたいな(^^)。
1904年という制作年が、なによりこの豊饒な音楽を作りだす背景にあったんじゃないかと。ドビュッシーの
「版画」や
「海」も、シェーンベルクの
「ペレアスとメリザンド」も、スクリャービンの神秘和声も、ちょうどこれぐらいの年でしたよね。スペイン音楽の大流行も、印象派音楽も、現在に繋がる新しい和声も、ヨーロッパで次々に生まれていた時代です。ロックにとっての1966~1972年、ジャズにとっての1948~1967年みたいなもので、クラシックの1890~1920年は特別と感じます。100年たっていまだにクラシック最高傑作と僕が感じるものがこの時代と2次大戦後に集中していると感じるもんで、もしかしてジャズもロックも100年たっても「1950-60年代だよな」とか「66年から72年だよな」とか言われるようになるのかも。いやあ、これはスコアも演奏も録音も文句なしの凄すぎるCD、素晴らしかったです!!そういえばカラヤンって昔マリア・カラスとも蝶々夫人を録音してますが、そっちも聴きたくなってしまいました…でも時間も金も限界があるからなあ(^^;)。。
- 関連記事
-
スポンサーサイト