
1950年代のジャズは、ハードバップのアドリブ合戦に白熱していたアメリカ東海岸に対して、西海岸はアレンジや美しさなど知的なアプローチが目立ちます。そんなふうに僕はイメージしてますが、このアルバムは,50年代に輝いたウエスト・コースト・ジャズの先陣を切った1枚、1952年発表の10インチ盤です。メンバーは、Gerry Murrigan (baritone sax)、Chet Baker (tp)、Bob Whitlock (b)、Chico Hamilton (dr)。もう、メンツだけでおいしい音楽が聴けそう(^^)。
このバンド、カルテットとは言うものの編成が面白くて、トランペット、バリトンサックス、ベース、ドラム…
ピアノレスです。そのコンセプトが独特の色彩を生み出していて、2管が和声的に絡んだり対位法的に絡んだりすることでアンサンブルの妙を作り出してました。ピアノを入れちゃったらこういう面白さは生まれないですもんね。そして、
3管ではなく2管にしたので、絡み方がフィギュアスケートのよう。「和音!」って感じじゃなくて、ふたりが糸のように絡んでいくのが楽しいです。こう書くと難しい音楽のように感じてしまうかもしれませんが、あくまで仕事帰りに寄ったジャズクラブでお酒飲みながら楽しめるような楽しいジャズなんですよ、ここが粋でいいなあ。
そして、ちょっと驚くのが
チェット・ベイカーのプレイです。チェット・ベイカーって、楽譜が読めなかったっていうじゃないですか。それでこういういかにもスコアに書いたような音楽を演奏しちゃうんだ、みたいな。スコアで演奏するならなんてことないと思うんですが、なかなか混み入ったラインなので、これを覚えて演奏するとなると、けっこう骨が折れると思うんですよね。スコアには弱かった人かも知れないけど、音感のいい人だったのかも知れません。さらに、アップテンポの曲でのチェットのアドリブが素晴らしくて、「イエ~イ!!」みたいにちょっとご機嫌なってしまいました(^^)v
ジャズって、少なくともこのアルバムの40年ぐらい前にはもうクラシックと交流があったし、やろうと思えばこれぐらい粋な事は出来るレベルまで来ていたはずです。実際、
ウディ・ハーマン楽団とか、先駆けはあったんですよね。そういうクラシカルで知的なアプローチのジャズが大衆に受け入れられたのが凄いです。大衆文化から知性のかけらもなくなった今だったら、こういうのが出てきても聴かれずに終わっちゃいそうですもんね。。
難しすぎず、しかし知的で、アドリブに行けばマリガンもベイカーも見事なアドリブを聴かせてしまうという実にシャレオツな1枚でした!そうそう、
マリガンもベイカーも、お宅でクサそうで音楽だけやってるマニアじゃなくて、ルックスもファッションもかっこいいし、粋ですよね。こういうものぜんぶ含めてウエストコースト・ジャズというんじゃないかと。このレコード、僕は10インチ盤で持ってるんですが、むっちゃ高かった…。今だと、ボーナストラック入り18曲のCDが出ているので、そっちを買った方がいいかも。
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