
日本の戦後の現代音楽作曲家・
新実徳英さんの管弦楽作品集です。新実さんは、少なくとも管弦楽曲に関しては
ヘテロフォニーが特徴のひとつになってる作曲家です。ヘテロフォニーというと
西村朗さんもそうでした。三善晃さんや黛敏郎さんや
武満徹さんの世代の後の日本人作曲家では、僕は新実さん、細川俊夫さん、その後だと原田敬子さんあたりが好きです。このへんの人たちは、妙にニッチな所でチマチマやってないで、音楽の核心部分に正面からぶつかってるようでカッコいいです!
1. 創造神の眼 ピアノ協奏曲Ⅱ (1993)
2. ヘテロリズミクス オーケストラのために (1991)
3. アンラサージュ1 混声合唱とオーケストラのために (1977)
「創造神の眼」は、タイトルはちょっと痛いものの(^^;)、構造が素晴らしかった!地球の初期状態だったガス星、そこから星や人類が生まれて、色々と歴史が刻まれて、未来に混沌があって…というイメージを音化したそうです。そういう展開が念頭にあったからか、時間軸上でのドラマ展開が明確でした。一方の縦軸の構造は中々に多層的。簡単に言うと、いくつかのモチーフの反復とそのホモフォニーまたはヘテロフォニー的な展開が各楽章(といっても切れないで進むので、楽章分けしてあるかどうかは分かりませんが、明らかに変わる部分があります)の構造原理で、それが音楽の進行に合わせて何度か展開します。展開としては、リゲティ的なホモフォニーというかヘテロフォニーというか、そういう感じの重なり方で音がたゆたうリゲティ的な楽章と、はげしく展開していくヴァリエーション部分を組み合わせて出来ていました。すごくザックリいえば、ですけど(^^)。この構造化が実にたくみで、しかも統一感があって分かりやすかったです。
僕が新実さんを好きなのは、大楽節と小楽節とか、多層的な瞬間的な構造とかが実に整序されている所なのかも。23分ほどの曲なのですが、聞き惚れてしまって、構造を捉まえられるまで何度も繰り返し聴いてしまいました(^^)。これはいい!
「ヘテロリズミクス」。始まり方が「創造神の眼」に似ていたもんで、最初は同曲の展開部かと思った(^^;)。これは尺八本曲から取った旋律主題がずれていって…みたいな、まさにヘテロフォニーな曲。でもそれがすべてではなくて、そういう部分があって、大構造を作る大きなトゥッティみたいな所があって、またそういうヘテロフォニーな所があって、明確なクライマックスがあって、そのクライマックスが何度か押し寄せてくる感じで…つまり、構造や音楽の形成システムは「創造神の眼」と似ているかな?これもカッコよかった…けど、長いかな?
「アンラサージュ1」、新実さんの管弦楽曲では、僕はこれがいちばん好きです!新実さんの出世作で、混声合唱と管弦のための曲。始まった瞬間のサウンドからしてカッコよすぎる!3分半ぐらいで出てくる合唱がヤバ美しい!これも同質の音型がずれていく
ヘテロフォニー的な構造が随所に出てきますが、それよりもしっかりした全体構造の骨格のすばらしさ、見事な重なりの和音の美しさの方に耳がいきました。やっぱり作曲は技法にとらわれ過ぎないで、かといって技法をないがしろにしないで、挑戦的な所と、確実に感性に訴える自由作曲を組み合わせるのがいいのかなあ。この曲は奏法を満たしてるようで、実に見事と感じました。77年作曲という事は、30歳でこの曲を書いたのか、すごいわ。。
ザックリいうと、響きは西村朗先生やリゲティに似てる感じ、でも彼らよりも構造がしっかりしている所が好きです。新実さんは、ヘテロフォニーの作曲家なんて言われていますが、それにしてはあんまり偶然性に頼っていないというか、音響派的な所に逃げていないというか、そういう構成要素やサウンドを捉まえつつも、構造が実にしっかりしているしクライマックスが明確なので、良いと感じやすいのかも。戦後生まれの日本人作曲家さんの中では、やっぱり特に好きな人のひとりだなあ(^^)。ところで、こういうヘテロフォニーな曲の楽譜ってどうやって書くんだろう。アイヴズの楽譜みたいに、パートごとに小節線が一致しない感じで書くのかな?指揮者は大変そうだな、スコアを見てみたいです。ああ、音大に行ってる時にジャズやってないで、もっとしっかり学んでおけばよかったです。ジャズやポップスなら卒業後にいくらでも出来たんだから…。
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