
サザン・オールスターズのリーダー・桑田佳祐の最初のソロ・アルバムだったと思います。このアルバムに入っている「いつか何処かで」という曲、もうこれが入っているというだけで手放せないアルバムです。
若い頃の僕というのは、どちらかというと肩ひじ張って生きていたような気がします。だから、テニスサークルとか合コンとかトレンディードラマとか、そういうのは嫌いでした。若い頃の思い出というと、バイトで懸命に皿を洗ったり、それで稼いだお金で買った楽器の練習を一生懸命したり…みたいな感じ。でも、本当は彼女も欲しかったし、強面で通ってたけど、本当はシャイで、好きになった人には声すらかける事が出来ないで…。ちょっとだけ不良気味だったので、付き合う人というのは、年上の人だったり、不良気味の女だったりという感じだったんですが、本当に心動かされた人は、テニスサークルに所属している子だったんです。でも、そういうタイプの子に声をかけるというのがカッコ悪い気がして、ひとりでバイクに乗って海に行ったりして、辿りついた海では、結局仲良さそうなカップルを眺める羽目にあってる…みたいな。こういうちょっと屈折した感情って、嫌な思いになりそうなものなんですけど、10年も20年も過ぎた今から振り返ると…懐かしいんですよ。ちょっと胸がキュってなる感じ。涙が出てきちゃいます。そして、そういう懐かしさと切なさが混じったような感情が、桑田さんの「いつか何処かで」を聴くと思いだしてしまうのです。
今でも会いたい気持ちでいっぱい…
そんなみじめな恋などしたくない
その名前はもう声に出せない…
その好きな子とは、たまたま通学の時に一緒になった事があります。電車で、学校に行く駅で降りて、急に声をかけられたんです。もう、何の屈託もない笑顔で。僕は顔も見れない、声すらかけられないというのに…。で、駅から学校までは結構遠かったんですが、その間に二人で話をして歩きました。カッコつけてる僕は皮肉めいた冗談を言って見たり、笑う時もニヤニヤ笑うみたいな感じなのに、彼女はもう開けっぴろげで、本当に無邪気に笑うんです。でも、その子と再会する事は、一生ないんでしょうね。会っても、向こうは覚えてすらいないと思います。
…ちょっと音楽と違う話になっちゃいましたけど、桑田さんの「いつか何処かで」を聴くと、僕みたいな「裏側」の価値観ではなくって、この話に出てくる女の子が持っているような「表側」の価値観の上にあるような世界だと感じてしまいます。恋をして胸がキュっとするなんて、僕としては唾棄したい価値観なんですが、しかしそれは現実として存在してしまう、という。そういうちょっと切ない懐かしさがこみあげてきて、涙が出ちゃいます。それぐらい、いい曲だと思います。
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