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書籍『1976年のアントニオ猪木』 柳澤健・著

19786nen no AntonioInoki プロレスのドキュメントとして最高に面白かった本です!猪木が現役時代に戦った3試合のセメント・マッチ(ヤラセではない真剣勝負の試合)の背景を、きちんと取材して書いてありました。子どもの頃はプロレス雑誌の脚色された情報を鵜呑みにしていたもんで、「ああ、本当はそういう事だったんだ」と腑に落ちて本当に面白かったです(^^)。

 最初に、セメントに至るまでの猪木の心情の経緯が書いてありました。簡単に言うと、全日本プロレスの様々な妨害に対して、猪木(=新日本)の対抗策が「俺たちは本物で、本当に強い」という事を標榜する策に出たという事みたいです。猪木のこうした反骨精神は日プロ時代からあって、知名度で勝てないなら実力でナンバーワンになろうと、メインイベンターになってからも若手に交じってゴッチの下で真剣にレスリング技術の習得に没頭していたそうです。Numberというスポーツ誌に掲載されたゴッチの証言「将来性のあるのは猪木だけだとすぐに分かった(中略)猪木に『もうやめろ』と言っても、倒れるまでやめない。明日という日がないみたいにやるんだから、こっちは参ってしまうよ」という言葉が引用されてました。実際に、日プロの道場ナンバーワンは猪木だったそうですね。日本プロレスと言えば関取出身が大量にいて、他にも柔道日本一の坂口やアマレス強豪マサ斉藤までいたのに、その中で道場ナンバーワン取ったんだから凄いです。で、馬場の妨害をはねのけるために猪木がやった事は、努力以外にもプロモーターとして凄くて、悪訳レスラーのシンに実際に街中で自分を襲わせて社会事件として報道させ、その決着をリングでつけるという事までやってしまう狂気ぶり。猪木が社会現象になったのもうなづけます。

Inoki vs Luska 以降は、柔道重量級世界一となったウイリエム・ルスカ戦、ボクシング現役ヘビー級チャンピオンのアリ戦、韓国プロレスのパク・ソンナン戦、パキスタンのアクラム・ペールワン戦について、それぞれが1章を使う形で書いてありました。対戦相手の状況や試合のアングルが細かく書いてあって、これは読み物として最高に楽しかったです。ルスカなんて、当時総合格闘技があったらと思わずにはいられない逸材に思えました。スタミナがなく、柔道に心酔しすぎて他のものを吸収するのをはねつけていたらしいので、そこさえ克服したら本当にすごかったんでしょうね。でも実力を発揮する場所がなく、柔道世界一になっても娼婦のひもだったルスカには仕事が来なくて、それで猪木との戦いに挑んだらしいです。

Inoki vs Ali モハメッド・アリ戦。アリは素晴らしい人でした。この本によると、アリは台本ありのプロレスやるつもりで来たのに、猪木にシュートマッチを仕掛けられ、それが分かっていてもリングにあがったそうです。猪木が寝たまま蹴るアリ・キックに徹したのは、ルール上立ったまま蹴る事が禁止で、足払いはOKという事だったからで、あれは足払いという事らしいです。で、猪木不利のルールだったという事はまったくなく、まだ異種格闘技の公平なルールがどういうものか模索状態だった時期のルールにしては、「ボクサーは殴って勝て、レスラーは組んで勝て」という比較的公平なものだったそうです。アリが殴る間合いに入らなかったのも、猪木が組みつきに行けなかったのも、真剣勝負だったからどちらも怖くて踏み込めなかった、というのが真相みたいです。それにしても猪木、アリにマジで勝てるつもりだったんですかね(^^;)。いくらなんでもボクシングの現役ヘビー級チャンピオンに挑戦とか、死ぬ気かよと思ってしまいます。

 パク・ソンナン戦は、韓国側プロモーターの思惑が外れ、猪木が敗戦を拒否した事からシュートマッチに発展したとの事。パクはあくまでアメリカン・プロレスなショーレスラーだったので猪木の前で何もできず、フェイスロックで歯が唇を突き破り、目に指を入れられ、リンチ同然であっという間に終了。いま、ビデオで見る事の出来る猪木vsパク戦はこの試合じゃなくて翌日の試合だそうです。パクさんがすげえビビってるのが分かるビデオですが、前日に目に指突っ込まれたんだったらそれも仕方ないですね。猪木こわい。

Inoki vs AclumPaleOne ペールワン戦。格闘家としての猪木の株をあげた有名な試合ですが、これはアリ戦の逆で、プロレスをしに行ったらシュートマッチを仕掛けられたんだそうです。因果応報ですな(^^;)。ペールワンの誤算は猪木をショーレスラーだと思っていた事で、いざシュートを仕掛けたら猪木はゴッチなどから教わった危険な技をいっぱい持っているシュートレスラーだった、みたいな。どちらも打撃技がないグラップラーなので、アリ戦と違って試合がかみ合ったんでしょうね。1ラウンドですでに猪木がダブルリストロックで勝負を決めていますが、猪木は確実な勝ち方を選んで無理に勝負に行かなかったそうです。ビデオを観ると自分から外しているので、まだ本当にセメントなのかどうか疑心暗鬼みたいに見えました。でも、2ラウンド以降は完全に相手を仕留めに行っていて、マウントを取ったりバックをから押さえたりしながら相手の急所にくるぶしを押し当ててスタミナをロスさせ、ラウンドが進んだ所で目に指を突っ込み、最後にダブルリストロックからアームロックという猪木の必殺パターンでペールワンの腕を粉砕して試合終了。ヴォルク・ハンやルーテーズや猪木の試合を見てると、ダブルリストロックって、相手の指を捻って入ると防ぐのは相当に難しい技に見えます。つまり、ダブルリストロックの使い手に対して、手を手で防ぎに行くとヤバい、みたいな。それにしても猪木、平然と相手の目に指を突っ込むんですね、怖い。。藤原喜明さんが「笑って相手の腕を折れるのは猪木さんと佐山だけ」なんて言ってましたが、分かる気がします。

 この本の最後は、この3試合を終えた猪木は、シュートマッチはリスクが高すぎると判断、以降はシュートを戦わなくなり、でもこの3試合がのちの総合格闘技のルーツになっていったというしめくくり方でした。う~ん、確かに僕なんかは猪木の異種格闘技戦から佐山、前田、シューティングやUWFやリングスやパンクラスというルートをたどって総合格闘技を見たので、たしかにそうかもしれません。

 いくつか勉強になった事が。まず、何をやるのでも本物の技術がないとダメという事。上っ面だけじゃダメなんですね、音楽に例えれば、馬場じゃせいぜい産業ロック程度のものしか作れない、猪木や佐山みたいな技術があってはじめて『太陽と戦慄』みたいなものを作れるという事。次に、何かをやる時はルールを突き破る過剰さが必要という事。逮捕覚悟でシンに凶行をさせるとか、自分の名をあげるためにだましてでもアリをリングに上がらせるとか、普通じゃないけどそれぐらいやる覚悟がないと、という事ですね。そして最後に、本業以外の事をやってはいけないという事。ああ、猪木が事業なんかに手を出さずプロレスや格闘技だけを考えていれば…。いずれにしても、最高に面白い本でした!

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Comments
セメントもショーの一部 
実力と狂気があったからこそ、ショーも出来たんだと思います。
猪木とは、シャーマンプロレスと対極にいたと言われてますけど、私からすればあれこそが最高のシャーマンプロレスだったのだと思います(^^)
Re: セメントもショーの一部 
ボネ太郎さん、書き込みありがとうございます。

おっしゃる通りだと思います。猪木は「ガチか嘘か」の瀬戸際で演出していた人だと思います。このへんは前田日明さんも同じで、ガチになってしまった場合はそれもショーに組み込む、みたいな。でもそれって、実力がある人じゃないと出来ない方法ですからね。

ところで、シャーマンプロレスって何でしょうか。すみません、無知で…
え? ブッチャーのこと? 
黒い呪術師?
それとも卑弥呼?
あっ! カール・ゴッチ?
私が聞きたいです。なんですか?
シャーマンって????


痛いとこ突いてくるなぁ(爆笑)
Re: え? ブッチャーのこと? 
あ、なにかの言いまちがいなんですね。
小中学生の頃はプロレスに熱狂していたけれど、その後徐々に見なくなってしまったもので、新しいプロレス用語なのかと思いました。もしかしてショーマンの事でしょうか?

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狭いながらも居心地のいい宿で、奥さんとペット数匹と仲良く暮らしている音楽好きです。若いころに音楽を学びましたが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

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