
日本伝統軍歌振興財団が作った「古典芸能ベストセレクション」という2枚組CDシリーズの中のひとつ、能・狂言編です。ひとつ前に感想を書いたビクター盤
『能楽囃子名曲集』との一番の差は、ビクター盤が囃子方の演奏だけを収めているのに対して、こっちのCDは能の舞台で鳴っている音をぜんぶ収録していて、
シテ方やワキ方のセリフも、地謡の斉唱も、もちろん囃子方の演奏も全部録音されていました。収録は、能「安宅」、能楽囃子「獅子」、狂言「三番叟」「末広」、狂言謡「七つ子」「暁の明星」。 能で入っていたものは、歌舞伎の人気演目「勧進帳」の元ネタ「
安宅」。
能面を使わない能としても有名だそうです。とはいっても、いきなりセリフから始まってますし、ダイジェストかと。このCDで良かったのは、このセリフが全部ブックレットに書いてあった事です。能はセリフにヴィブラートがかかっているし、言葉遣いも古くて聴き取りきれない事が多いので、これは有難かったです。また、すべての音が入っているので能の舞台全体の流れが分かりやすく、囃子が中心のところ、セリフが中心のところ、地謡が出てきて、たぶん舞いを舞っているところ、みたいな流れが見えやすくて良かったですす。ただ、聴いているうちに、こういう収録をするなら、舞も見る事が出来るDVDの方がいいんじゃないかと思ってしまいました(゚∀゚*)エヘヘ。そりゃそうですよね。
能楽囃子「獅子」は、ビクター盤と演奏がそっくりだな…と思ったら、メンバーがまったく同じ!これ、同じ音源だと思いました。
「
三番叟」は、
能楽「翁」の後半部分で、狂言方が務める舞いの事。このCDに入っていたのは和泉流(狂言には和泉流と大蔵流がある)で、25分とけっこう長かったです。能だと、最初に大鼓と小鼓が交互に「イヨ~」と言いながら打ち合う所があったりしますが、三番叟の前半部分は大鼓、小鼓、太鼓、笛の合奏をひたすらリピートなので、舞いなしの音楽だけだと退屈かも。。でも、音楽が止まったセリフ部分の中間か以降はカッコよかった!
いわゆる狂言は「
末広」(すえひろがり)。狂言って、今観ても本当に笑えるものが多くて、台本の完成度はそのへんのコントより数段上と感じます。また、狂言は能みたいにヴィブラートを利かさないでセリフを言うので、聴き取りやすい所もいいです(^^)。僕が狂言をおもしろく感じるひとつに、シテとワキが同時に話したりするところがあります。能舞台って正方形で立体的なので、どちらかだけのセリを聴いても、両方を聴いてもいいインタラクティブを感じます。「末広」はそれが扇だと知らないで都にお使いに出た太郎冠者が、町人にからかわれて傘を買ってきてしまう話(^^)。音楽はほとんどなくて、最後にチョロッと出てくるぐらい。
狂言歌謡の中で独立性の強い舞いを伴うものを「小舞謡」というそうで、このCDに入ってる「七つ子」と「暁の明星」は、その代表曲だそうです。このふたつは無伴奏の歌で、僕の感覚だと歌というより節のついたセリフと感じました。
セリフや地謡を含めた、能の舞台のすべての音が入っているので、能を分かっている人ならビクター盤の方が音楽としては楽しめるんじゃないかと、でも、能を観た事がない方は、こっちの方が能の全体像が分かるところがいいかも。狂言も聴けますしね(^^)。
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