TVアニメ版の銀河鉄道999のサウンドトラックです。音楽監督は青木望さん。青木さんと言えば、僕は作曲家というよりはJポップの管弦アレンジャーとして名前を知っている人で、中島みゆきさんとの仕事が初体験だったかな?作曲作品はこのレコードぐらいしか持ってないかも(^^;)。
思いっきり
ベートーヴェンの月光ソナタっぽい曲が出てくるのはマジでやめてほしいんですが(^^;)、TV版999には大好きな曲がふたつあるのです。
ひとつは
エンディング曲。この曲のコードプログレッションが心に刺さります。この曲、ヴォーカルバージョンだと和声進行よりも主旋律と対旋律の関係が強調されているので分かりにくいんですが、実は和声進行が恐ろしくきれいなのです。例えばイントロですが、「D△ | Ddim | Gm6/D | D△」。Aメロの前半は「D△ | A7 | Em7 A7/A A7/G | F#m」。前者はジャズ和声を勉強した人ならおなじみのディミニッシュの使い方ですが、ずれる感じが鳥肌もので涙が出そう。後者はバスラインの順次進行を利用して部分転調を滑らか且つ劇的にしています。こういう色をつけられるかどうかがポピュラー音楽の作曲家とアレンジャーの大きな差で、「作曲はアマチュアでもできるがアレンジはプロでないと無理」という所以じゃないかと。
こういう西洋音楽のプログレッションやリハーモニゼーションの技術って後期ロマン派あたりから飛躍的に進化しましたが、青木望さんはこういう事をやらせたら超一流。『劇場版銀河鉄道999』の哲郎がメーテルを張り飛ばすシーンの音楽でもこの手の見事な魔術を使っていました。
もうひとつの鳥肌曲は、新し星に着いたり、物語のエピローグ部分などで良く流れた
「ラ~ソファ~ラソファ~」というピアノ入り管弦楽曲。このLPだと「序曲−出発」とか「終曲−永遠(とわ)の祈り」なんてタイトルがついていて、何度もヴァリエーションで出てくるので、
これこそテレビ版999の主題でしょう。これが映画版999のオープニング並みに素晴らしくて、聴いていて涙が出てしまいそうなほどです。
この曲で僕が感動してしまうのは、ザ・ロマン派みたいに感じるところです。聴いていると、宇宙の果てのまったく新しい世界に、絶世の美女と一緒に足を踏み入れて、音楽が壮大でありつつ、美しく、幸福感に満ち溢れ、希望が詰まっていて…これをロマン派的に解釈すると、救いとしての死の世界への参入としか思えないのです。
ワーグナー「トリスタンとイゾルデ」とか、もうああいう感じ。僕は死をメチャクチャ恐れてますが、いつかは絶対に死を受け入れないといけません。その時、死の恐怖を和らげるものって、
バッハのロ短調ミサとか、ロマン派音楽の壮大な救いの雰囲気とか、そういう音楽じゃないかと思うんですよね。
テレビアニメのサントラと侮るなかれ、999のメインテーマの美しさは、現代版ロマン派音楽の傑作だと僕は思っています。昔はLPがプレミアついていましたが、いまはCDが安くなって出ているみたいです。メインテーマを聴くためだけに買っても損はしないレベルの音楽、おすすめ!!
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