
1970年にスタートし、日本人ジャズを数多く記録した素晴らしいインディーズ・レーベル、スリー・ブラインド・マイスのレーベル第2弾アルバムです!第2号アーティストはピアニストの
今田勝さんで、ワンホーンカルテットでした。フロントを務めるテナー/ソプラノ・サックスは三森一郎さん。この方、僕は前田憲男さんのグループと今田さんのグループでしか名を見た事がないんですが、どういう方だったんでしょう。あまり見かけないまま消えるにしては、このアルバムでのソプラノサックスなんて素晴らしい演奏でした。良いプレイヤーなのに陽の目を見ない人ってきっと多いんでしょうね。。
カバーやスタンダードは一曲もなし、すべて今田さん作曲という所に気合いを感じました。全4曲、2曲目だけちょっとフリー気味の音響的なアプローチでしたが、アルバム全体はおおむねメインストリーム。そのメインストリーム3曲のうち2曲がスロー~ミドルスローなので、このアルバムの本筋はアップテンポのB面1曲目「Gehi Dorain」という事になりますが、これがドリアン調のモード曲。でもって、それが
ビル・エヴァンスや
コルトレーンの頃より、もうちょっと新しい時代の匂いがしました。なんといえばいいんでしょうね…デイヴ・リーヴマンまではいってないけど、あんな感じ?
このメインストリームというのが表現がむずかしくて…たとえばビバップやハードバップみたいなあのスタイルをやってるわけじゃないのです。でもニュージャズや新主流派的なのがバリバリかというとそうでもない。フォービートでのウォーキンベースを使ったりジャズ的なテンションを使ってコードプレスするので間違いなくジャズな感触なんですが、でもジャズ特有のビート感を追求してるかというとそうは聴こえないもので、ジャズではあるけどアメリカのあれと何か違う感じでした。70年代のイギリスのジャズも、ジャズ的ではあるけど何か違う感触があるじゃないですか。色は違うけど、あんな感じ。
でもそれが駄目かというとまったくそんな事はなくて、だからこそ良いとすら感じました。ぜんぜん違っていたら「そもそもジャズじゃなくていいだろ」となるだろうし、まったく同じだったら「だったらアメリカ本家のジャズを聴くよ」となるだろうから、アメリカと日本の間にあるものをやるのが正解だと思いますしね。
アメリカのジャズがどこかで引きずっているあのエンターテイメントな感じから切り離されている感触があって、でも思いっきり純音楽に持っていけてるかいうとどこかに70年代の日本の狭いジャズ箱で黄昏ている感じもあったりして、そこが好きなアルバムです。でも恐らく本人たちがそれを狙ったわけではないのでしょう。同時代の日本だと
富樫雅彦さんとか
高柳昌行さんとか、アメリカの模倣ではない純音楽としてのジャズを追求していた人がいっぱいいたわけで、そういうものと比べるとやっぱりアメリカのジャズをやってる感があって、だからこの「どこかに感じるアメリカのジャズとの差」は、狙ったわけではなく自然ににじみ出ているものなんじゃないかと。日本のジャズは70年代が一番面白かったと感じます。今なんて、洋楽のエピゴーネンかほとんどポップスみたいなのばっかりですからね。。
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