
ビートルズ解散後、ポール・マッカートニーが作ったバンドのサード・アルバムです。とはいえ、リアルタイムの世代ではないし、ポール・マッカートニーが格別好きだという訳でもないので、良く知らないのですが(^^;)、すごく良く出来たアルバムだと思います。
ビートルズって、やっぱりポール・マッカートニーあってのものだったんだろうな、という気がします。ジョン・レノンのアルバムに、これほどのクオリティなんて望むべくもないですしね。ジョン・レノンやジョージ・ハリソンがいなかったら、あのビートルズっぽい音楽は出来なかったかもしれませんが、ポール・マッカートニーさえいれば、形は変わってもやっぱりそれなりのバンドを作れたんじゃないかと思えてしまいます。逆に言えば、レノンさんやハリソンさんがいても、マッカートニーさんがいなかったらビートルズはモノにならなかったんじゃないかと。このアルバムを聴くと、そう思わされます。
さて、このアルバムの何がよく出来ているかというと、アレンジ、曲の様式、あとはすごく手間ヒマかけて作られているなあ、という感じです。しかしこれが、諸刃の剣でもあると感じます。というのは…
例えば、1曲目の楽曲構成。凝ってます。簡単に言うと、3曲を繋げたような作り。しかしこれって、うまく構成しないと、ひとつにまとまらないと思うんです。クラシックなんかを聴くと分かりますが、30分を超える曲でも、A~B~C~Dみたいな感じで新しいモチーフをどんどん繋げるという事はなくって、同じモチーフの変奏とか、そういう感じで曲に一貫性を持たせながら変化させながら…という感じで作っていきます。この、一貫性を保ちながら劇的展開も作って…という、相反するもののバランスを取るのが作曲で重要な点だと思うんです。しかしこのアルバムの曲の場合、飽きたら次…みたいになっちゃって、作曲としてはどうなのかな、と。このアルバムの幾つもの曲に聴かれる少しひねった構成って、うまく統一できてないように聴こえます。バラバラに作ったパートを強引に繋げているだけ、みたいな。アレンジにも似たことが言えて、デザインして作ったというより、手間暇かけてどんどんいじくり回して、結果として複雑で凝ったものにはなったんだけど、統一感が失われてしまって茫洋としてしまっている、みたいな。デザインしたというより、スタジオでのポストプロで色々いじった、みたいに聞こえるのです。あとは…デザインだけがあるみたいな感じなんですよね。表現というものが、演奏家からも歌からも感じる事が出来ません。楽譜を読まされている感じ。
とはいえ、安易なもののキンタロー飴状態のポピュラー音楽界で、これぐらいに「いいモノを作るぞ!」と気合を入れて作られた作品というのはあまり聴いた事がありません。僕的には70点と感じるアルバムですが、120点をつける人がいてもおかしくない完成度のポピュラーアルバムだと思います。
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