
ドイツのジャズ・レーベルECM、クラシック・シリーズから出た
ケージ作品集です。収録されているのは全6曲で、制作年代がバラバラなので、ケージの作品を俯瞰するには持って来いの1枚と言えるかも。収録曲は、以下の通りでした。
・セヴンティー・フォー(オーケストラのための)ヴァージョン1 (1992)
・四季 (1947)
・プリペアド・ピアノと室内管弦楽のための協奏曲 (1950/51)
・セヴンティ・フォー(オーケストラのための)ヴァージョン2 (1992)
・トイ・ピアノのための組曲 (1948)
・トイ・ピアノのための組曲(オーケストラ版/ルー・ハリソン編曲)
ケージの作曲技法の変遷でいうと、
「四季」と「トイ・ピアノのための~」は偶然性導入前の作品です。「四季」は、初期のケージ作品ですが、これがケージの作品だとはにわかに信じがたいほどに普通の作品です。なんだか日本の「さくらさくら」とか、ああいう感じの曲想なんですよ!でも、特に引っかかるものはなかったです(^^;)。
「トイ・ピアノのための組曲」は、おもちゃのピアノのための短い曲。作曲としては、けっこう音符通りに弾く作品なのかな、と思いました。これは子どもの遊びにしか聴こえなかった(^^;)。同じ曲のルー・ハリソンによるオーケストラ・アレンジは、単純にこっちの方が、音が豊かなのでリッチでしたが、でも褒めるほどのもんじゃないかな(^^;)。。
「セヴンティー・フォー」はケージ晩年の作品で、ナンバー・ピースと言われるもののひとつ。これがこのCDでダントツに素晴らしかったです!!
高い音と楽器群と低い音の楽器群のふたつのパートが、それぞれ指定されたひとつの音を、好きなタイミングで好きな長さを保って出すというもの。言葉で書くと単純に思えますが、
これが実際の音になるとメッチャクチャ美しい!もしこれをピアノだけで演奏したら、オクターブ離れているだけの音は、音が溶け合ってしまって複数の音が鳴っているようには聴こえにくいと思うんですが、オーケストラ楽器だと違う音が積み重なってるように聴こえるから不思議。弦楽器なんかの微妙な音程差なんかも、そうなる要因なんでしょうか。そして、オクターヴ違う音は最も協和する音程だからか、果てしなく美しく聴こえるのです。これが2バージョン入ってるのは、プレイヤーに意図を投げているので、作曲としての偶然性があるために、2バージョン入れてその偶然性を示そうとしたのかも。
「プリペアド・ピアノと室内管弦楽のための協奏曲」は、偶然性の手法に入って以降の作品。主に数列を用いた作曲技法との事ですが、最初の2楽章はそれによって書かれているようなので、実際には偶然性かどうかは聞き手には分からないですよね。ただ、偶然性の有無に関わらず、サウンドのカッコいい音楽で、第2楽章のプリペアド・ピアノは相当に良い!そして、この曲で有名なのは第3楽章で、コインを投げてそれまでのチャートの組み合わせを決める、またそのまわりの32の異なる動きのどれを作動させていくかを決めるというもの。でも個人的には、偶然性の第3楽章より、そのまえの1~2楽章の方が面白かったです。
というわけで、僕的には「セヴンティー・フォー」と「プリペアド・ピアノと室内管弦楽のための協奏曲」の1~2楽章をきくためのCDでした。そして、その両方に言えるのは、無作為とか偶然性とか、そういうところに感じたわけではなくて、無作為でも作為でも僕にとってはどうでも良くて、音楽としていいと思った所に感じたという事でした。そして、そのいいと思うところが、どちらも西洋音楽から外れた部分だった、と。でもそれは、西洋音楽がダメなんて意味ではまったくなくて、この音楽で良かった所が、たまたまそういう部分だったという事な気がします。
アメリカの作曲家って、西と東でちょっと分かれる印象があります。東はヨーロッパ文化な所があって、西はヨーロッパ型の文化とまったく違うものを自由に生み出す感じ。これって音楽に限らず、美術もビート文学もそうですよね。ケージもロサンジェルス出身で、西の人。やっぱり個人というのは文化の中から出てくるんですね。ジョン・ケージの作品では僕的イチ押しCDです!
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