
名作と言われている
シマノフスキ「神話」を聴いても印象派のエピゴーネンとしか思えなかった僕が、シマノフスキに惹きつけられたのがこのCD。シマノフスキの管弦つき声楽曲を集めてあって、合唱つきの交響曲3番「夜の歌」は有名ですが、あとのふたつの曲はまったく知りませんでしたが、これがどちらも素晴らしかったです!
先に、指揮のサイモン・ラトルについて。世界のオーケストラの中でも、ベルリン・フィルハーモニーは名門中の名門。
ベルリンフィルの歴代常任指揮者は全員超有名で、フルトヴェングラー、チェリビダッケ、カラヤン、アバドと来て、その次がイギリス出身のラトルでした。ロマン派音楽に強かったベルリン・フィルに古典派や現代の曲を色々と持ち込んで、ベルリン・フィルをロマン派専門の若干偏ったオケから、西洋音楽の思想を広くとらえたようなオケに押し上げたのはラトルの業績じゃないかなあ。超一流ですね(^^)。
さて、このCDのザックリしたイメージについて。僕的なクラシックのイメージは、こんな感じです。バロック期のバッハや近現代のシェーンベルクやヴェーベルンの音楽は音楽そのものの追求。モーツァルトやハイドンは貴族の楽しみ。そしてロマン派周辺は素晴らしくてもあくまで享楽的。本でいえば、哲学は印象や思想を排した上での人間そのものの言語的な追及ですが、そういうのに比べると、太宰治やカフカは哲学的な題材を扱ったとしても、情緒的な感覚で捉えた人間観に軸足を残しているので、深いかもしれないけど根本が享楽的だと感じるのです。そういう意味で、シマノフスキの音楽も、仮に宗教的題材を扱ったとしてもどこか娯楽的に感じます。交響曲3番はペルシャの詩人ルーミーの詩を取りあげていて、他の2曲はキリスト教絡みのテキストを使い、どれも題材が高尚で、場合によっては宗教色すら強いのに、享楽的に聴こえるのです。サウンド的にはスクリャービンや印象派の影響もかなり強く感じる作品群ですが、メンタルが根本的にロマン派的なんだと思います。
そういう意味でいうと、聴いていて楽曲分析しようという気にはならず、ただ音の海に使って悦楽的に聴いてしまうんですが、それでいいんだと思えるほど気持ちいい!クラシックのロマン派的な人間的ところは、いつか通り過ぎてしまった自分がいます。でも、久しぶりに戻ってくると、考えたり祈ったり笑ったり泣いたりというのも、人間的でいいもんだなあ、なんて思ってしまいました。ぜんぜん曲の紹介になってませんが、音の色彩感が相当に増した後期ロマン派音楽という感じ。このディスクがなかったら、僕はシマノフスキをあんまり聞かずに終わってたかも(^^)。音の色彩が素晴らしい1枚、これはおすすめです!
- 関連記事
-
スポンサーサイト