ライナーによると、この音楽は当時のガーナのダンスホールやコンサートで演奏されていた音楽だそうです。そうですよね、これはプロ楽団がお客さんを楽しませるために演奏した音楽という感じでした。「ハイ・ライフ」という言葉自体が、アフリカでセレブな人生みたいな意味なんだろうし、それって日本のモガみたいなもんで、土着の文化は古くさく、西洋化したものは金持ちだし新しい、みたいな側面もあったんじゃないかと。 あと、雰囲気が楽園時代のキューバ音楽にもすごく近く感じたんですが…それって別に変な事じゃないのかも。だって、ガーナを含めた奴隷海岸から連れて行かれた奴隷が、奴隷労働力としてキューバとかに運ばれていったんですから。 一方で、とてもプリミティブに感じる曲もいくつか入っていました。2曲目「Down the Congo」なんかは、歌詞こそ英語でしたが(イギリス領だったので、もしかすると公用語が英語だったのかも)、まったく西洋音楽の影響を感じさせないものでした。水をパシャパシャやる音がリズム楽器のひとつとして使われてる…これはアフリカならではかも。そういえば、ピグミーの音楽にもそんなのあったなあ。4曲目「Drum Festival」なんて、コートジボアールの打楽器音楽とそっくり。もしかすると、エンターテイメント・バンドではあるんだろうけど、そのベースにあった西洋とフュージョンする前のアフリカ音楽を敢えて収録する意図があったのかも。
CDのタイトルや表紙を見ているだけではわかりませんでしたが、ジャケット裏やライナー見ると、これって「Saka Acquaye and His African Ensemble」というプロ・バンドの演奏だそうです。ハイライフ自体は19世紀からガーナやナイジェリアにあった音楽らしいですが、便宜的に2次大戦以降のものを「ハイライフ」、それ以前のものを「パームワイン・ハイライフ」とか「ハイライフ・ブラスバンド」なんて呼び分けているそうです。僕は実際の音を聴けてないので文字だけの知識なんですが、「パームワイン・ハイライフ」はギターやバンジョーを主体とした音楽で、「ハイライフ・ブラスバンド」はイギリス軍のブラスバンドとアフリカ音楽がフュージョンした音楽だそうです。なるほど、これらがさらに欧米音楽とフュージョンしたのが第2次世界大戦後のハイライフなんだろうなと感じました。だって、ブラスバンドもギターも入ってますし。ハイライフは、僕がイメージするアフリカン・ポップスのイメージほとんどそのものの音楽でした。キング・サニー・アデもサリフ・ケイタもユッス・ンドゥールも、みんなこの音楽を通過した音楽と感じたほど。 アフリカン・ポップスって大体こういう成立の仕方をしてるのかも知れませんね。ハイライフのみならず、リンガラもそうだし、ジュジュもそうだし。ジュジュなんて、ハイライフがあったナイジェリアの音楽という事を考えると、ハイライフから直接の影響を受けてるのかも。いやあ、収録時間は短かったですが、これは買って良かったと思える素晴らしい録音でした。アフリカン・ポップスに手を出すなら、マスト・アイテムかも知れません!