『ポーランド 民謡と踊り』に続いて、ジュネーヴ民族博物館のシリーズの1枚です。ルーマニアもぜんぜん知らない国ですが、ポーランドよりはイメージできるかも。コミック
『マスターキートン』の最終話がルーマニアを舞台にした見事な長編だったのでね。
正教会系で、けっこうモンゴロイド系の顔だちの人が多くて、社会主義以前の封建農家が生きていて、大草原の広がる田舎が多い東欧の農業国…って、マスターキートンの情報だけという事に今気づきました(^^;)>。そんなルーマニアの民族音楽ですが…
エキゾチックで、メッチャかっこよかった!! このCDの音源は、ルーマニアの民族音楽のCDで一番の重要な資料なんじゃないかと。というのは…ハンガリーやルーマニアの民謡研究と言えば
バルトークですが、そのバルトークのルーマニア音楽研究を引き継いだ人に
コンスタンチン・ブライロユという人がいたそうです。この人、ルーマニア作曲家協会に所属する民族音楽研究所を設立して、
1933-43年の10年間、ルーマニア国中を歩き回って、民謡を採取したそうです。その録音はもともとSP盤で3枚に記録されていましたが、その一部をまとめたのがこのCD。(*僕が買ったのは日本編集盤ですが、オリジナルのフランス盤だと3枚バラで完全版が出てます。)おお~すごい!民謡とか土着の音楽って、ヨーロッパの帝国主義にどんどん滅んでいくので(日本なんて全滅状態)、いま採取しようとしても出来ないんですよね。実際、このCDに記録された村の民謡の一部は、民謡どころか村自体が滅んで今はないのだそうで。だから超貴重なのです。

このCDでは曲種ではなく地域別に3分割して音楽を収録してありました。3つというのはオルテニア(M1~9)、モルダヴィア(M10~24)、トランシルヴァニア(M25~)の3つ。音楽はなかなか複雑な様相をしてしていると感じました。たとえば、日本なら、民謡ってどれも似ていると思いません?源流が似ているというか。ところが
ルーマニアの音楽は実に多彩。スラブ音楽的なところでは田舎歌的や複雑なリズムの舞踊曲、それに葬式の時に泣き女が歌うラメントあたりがそんな感じ。でも、それだけでなく、トルコ音楽っぽい器楽、ラテン色の強い音楽、ジプシーのヴァイオリン音楽…もう、色んな音楽のチャンポンでした。ジプシー色なのかマジャール色なのか分かりませんが、「なんだこれは?!」という音階やリズムも結構あって、ゾクゾクきました。民族音楽を聴く楽しさって、英米の長調か短調のどちらかという狭い範囲の音楽からはみ出した快感があると思うんですが、ハンガリーは音階にしてもリズムにしても、東欧の中でもエキゾチックさの際立った音楽と感じました。そして、土着の音楽なのに高度な部分、これは民謡ではなくジプシーのプロ楽団やトルコから流入したんじゃないかと思われるアラビア音楽あたりがそうなんでしょう。どこの国の音楽でも、やっぱり専門に音楽をする人がいた地域の音楽は高度に発展するんですね。
ルーマニアの音楽はとても
エキゾチックで、西洋を感じるものですら西ヨーロッパではなくスラヴ色が強くて、それですらベースにあるものは西洋音楽じゃない感じ。えらくプリミティブな感じもするし、逆に偉くアヴァンギャルドにも感じました。要するにそれって僕が西ヨーロッパを中心に音楽を捉えてるという事ですよね。つくづく政治的グローバリゼーションに毒された感性を持ってるんだなあ。フラットとまでは言わないまでも、せめて日本音楽を中心に考えられる人間でありたいもんですが、その日本自体の文化が西洋かぶれの100年ですから、これは仕方ないか。ルーマニアの音楽、メッチャクチャ面白かったです!
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