
この前、
能と狂言に行ってきました。狂言は爆笑、あんなに面白いものだとは思わなかった(^^)。能は言葉が難しいし、発音が独特でなに言ってるのか聴き取れないレベルなので、予習して行ってよかったっす。そして、色々ジーンと来ました。感動というのとはちょっと違うけど、深くて唸らされる…。
主人公が死人だったりするんですよ、すごくないですか?というわけで、予想以上に素晴らしかったもので、能・狂言の基礎知識をまとめておこう、そうしよう。
■能とは 能楽は、普通はひとつの演目をやるだけでなく、長い時間をかけて能や狂言をやるのが普通。能と狂言を合わせて「能楽」といい、能の台本でもある楽曲を「謡曲」という。
■番組 能はシリアスなメインディッシュで、狂言はコメディみたいな前菜。僕が見たプログラムは、能と狂言のほかに「舞囃子」というものもやってました。
舞囃子は、能のクライマックスの舞踊部分だけをやる感じでした。これら全部を、能楽堂で、長い事やってるのが能の舞台の基本構成で、この構成を「
番組」というそうです。音楽でいうタイバン制のライブやフェスティバルみたいなもんですね。
伝統的な番組は、「翁」(おきな)を冒頭に置いて、能5曲、狂言4曲という番組構成を作る「翁付き五番立」というものだそうですが、この通りになるとは限りません。僕が観たのは、舞囃子1曲、狂言1曲、能1曲という番組でした。そしてこの能楽の翁付き5番立は、それぞれ名前がついていて、演目の傾向が決まっています。
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翁(式三番):能・狂言のルーツとも言われ、祝言性に満ちた儀式的な芸能。
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初番目物(脇能物):神社仏閣の縁起を語ったり、神を主人公として平和や幸福を祈る作品群。主な曲目に、嵐山・絵馬・高砂・鶴亀・養老など。
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二番目物:言辞や平家の武将を主人公に、死後も修羅道で苦しむ姿を描いた作品群。世阿弥が確立したジャンル。主な曲目に、敦盛・清経・実盛・田村・頼政んど。
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三番目物:源氏物語や伊勢物語などの王朝文学の登場人物を中心に、優美な女性たちを主人公とする作品群。幽玄な美は、三番目物に多い。主な曲目に、井筒・江口・小塩・芭蕉・二人静・松風・羽衣・草紙洗・桧垣など。
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四番目物(雑能):物狂いの能をはじめ執心、怨霊、人情など、他のジャンルに属さない能を総称している。人気のある演目が多く、のちに文楽や歌舞伎にとりいれられたものも多い。主な曲目に、葵上(あおいのうえ)・阿漕(あこぎ)・道成寺・安宅・砧・蝉丸・橋弁慶・藤戸・花月・恋重荷(こいのおもに)など。
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五番目物(切能):鬼や竜神などを主人公に、派手な演出のものが多い。主な演目に、土蜘蛛・殺生石・鞍馬天狗・船弁慶・鵜飼・小鍛冶・石橋(しゃっきょう)・融(とおる)など。
能は200曲ほどがスタンダードになっていますが、実際には2000曲ほど作られてきたとのこと。また、他流にあって時流にないレパートリーをやったりするのを「復曲能」、明治以降に作られた新作を「新作能」というそうです。
■能楽の役柄 番組は、演劇みたいに、すべてひとつの劇団がやるのではなく、チーム分担制になってます。特に、メインになる
能は、3チームがひとつになって成立させる舞台です。そのくせリハーサルは1回しかしないんだそうです。大昔から演目が決まってるので、リハなんてしないでも合わせられちゃうみたい、すごい。その役柄は、以下の4つです。
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シテ方:能の主役を務めるチーム。
主役の「シテ」、シテのパートナーの「ツレ」、8人ぐらい正座して横で歌う「地謡」(じうたい)がシテ方。能楽は、シテ方が他の役柄チームに声をかけて舞台を構成する。
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ワキ方:能で、脇役を務めるチーム。
脇役の「ワキ」、脇役のパートナーの「ワキツレ」などがこのチーム。
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囃子方:音楽チーム。
大鼓(おおつづみ)、小鼓(こつづみ)、笛で構成され、演目によってはこれに太鼓が加わる。
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狂言方:
狂言は、すべてこのチームが行う。
そして、
ワキ方、囃子方、狂言方を総称して「三役」という。
■能の流儀・シテ方の流儀:
能で「○○流」という時は、だいたいシテ方の流儀を指す。
シテ方には5流あって、観世(かんぜ)流、宝生(ほうしょう)流を「上掛かり(かみがかり)」、金春(こんぱる)流、金剛流、喜多流を「下掛かり(しもがかり)」という。喜多流以外は室町時代の大和猿楽四座(やまとさるがくよざ)が源流、喜多流だけは成立が遅くて、江戸時代の二代秀忠にとりたてられて一流を興した。
・ワキ方の流儀:
下掛かり宝生流、福王流、高安(たかやす)流の3つがある。
・囃子方の流儀:
笛方、大鼓方、小鼓方、太鼓方の4つのそれぞれが、複数の流派を持っている。
・狂言方の流儀:
和泉流と大蔵流があり、それぞれの家ごとに芸風が異なる。
■その他、舞台上の役割・
子方:子供役者が演じる役を子方という。
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後見:舞台上の役者の後見役。紋服を着て後ろに座っていて、シテの服の乱れを直したり、持ち物の出し入れなどを行う。
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地謡(じうたい):シテ方の担当する斉唱隊。リーダーを
地頭(じがしら)という。
■能舞台の名称・メインステージ周辺:本舞台、地謡座、アト座、切戸(きりど)、鏡板、シテ柱・目付柱・ワキ柱・笛柱
本舞台はヒノキで出来た「檜舞台」。うしろに松が書いてあるのが鏡板、あの松は「老松(おいまつ)という。切戸は、後見や地謡の出入り用。
・橋掛かり周辺:橋掛かり、一ノ松・二ノ松・三ノ松、揚幕、鏡ノ間
3つの松は、ステージに近い方から1~3。鏡ノ間は揚幕の向こうで、楽屋はもっと奥にある。
■客席の名称 正面、中正面、脇正面。 いちおう全部覚えたつもりなんですが、1年経ったら忘れちゃうんだろうな(^^;)。というわけで、きっとこのメモは、僕や僕みたいな能の初心者を救うはず(^^)。また観に行きたいですが、次に能楽堂に行けるのはいつになる事やら…すっごくよかったんですけど、チケットがかなり高額なんですよね。。
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