
岩波科学ライブラリーのシリーズのウイルス関連の本が分かりやすくて良かったので、今度は同シリーズのワクチン関連本を読んでみました。こちらは2013年発行なので情報がちょっと古いかも。大局に影響はないでしょうが、いま世界中の人々が絶賛接種中のmRNAワクチンの情報など最新の知見はありませんでした…あたりまえですね(^^;)。
ワクチンそのものについての解説本というよりも、ワクチンの原理を最初に説明して、あとはその歴史を順次説明、最後に現状について書いている、みたいな内容でした。というわけで、個人的に大いに参考になったのは、最初の10ページである第1章「ワクチンとは何か」でした。まあでもタイトルに偽りなしですね、「ワクチンとは何か」ではなく「ワクチン新時代」なんですから。
以降は、おおむねワクチンの開発や接種の歴史が書かれていて、生ワクチンはよく効くけど強毒化した変異種を生み出しやすいとか、不活性化ワクチンは安全性は高いけど…とか、天然痘や鳥インフルなどのウイルスは人工的に簡単に作れてしまうからバイオテロに注意とか。
う~ん、2章以降は僕的には頑張って読んだ割に益が少なかったと感じてしまいました。「これこれこういう歴史があるから○○だ」と書いてくれれば機序や効用のメリット/デメリットの理解につながりやすかったと思うのですが(そこが知りたかったのです)、「これこれこういう歴史です」に限りなく近いので、僕はワクチンの歴史を学びたいわけじゃないんだよな、みたいな。さっきのバイオテロの話も、政治家や医療従事者には有益かもしれないし、また読み物としては面白いですが、機序や効能やリスク/メリットというワクチンそのものについての必要情報からは離れてますよね。
そうそう、天然痘ワクチンとかインフルエンザワクチンとか、それぞれのワクチンの機序についての説明があるので、それはワクチン接種の判断材料になると思いました。
というわけで、有益な情報は色々あったけど、僕みたいな医学の門外漢がそれをワクチン接種の判断基準にする情報として受け取るには、読む側に工夫が必要となる本かと。何について書きたいのかが分かりにくいんですよね。有益な情報も色々ありましたが、最初の10ページを読むならネットで充分だったかも(^^;)。
(追記:ちょっとした備忘録)
とはいえ、1章は素晴らしかったです!備忘録を残しておこうかと。
■1章:ワクチンとは何か・
ワクチンが感染症に対して予防効果を発揮するのは、人体に備わっている免疫を活性化するから・
獲得免疫:細菌やウイルスといった病原体に出会うと、人体は病原体の構成成分である抗原を記憶する。そして同じ病原体に出会った時には強く反応して排除する。このような機能が獲得免疫。・
獲得免疫は、B細胞による液性免疫とT細胞による細胞性免疫からなる・
獲得免疫で重要な役割を果たす細胞は3種。
B細胞とT細胞というふたつのリンパ球、マクロファージや樹状細胞のような抗原提示細胞。
・
B細胞は抗体を作る・T細胞はヘルパーT細胞とキラーT細胞に分かれる。
ヘルパーT細胞はB細胞が抗体を作るのを助ける。
キラーT細胞は正常でない細胞を攻撃して殺す。
T細胞による反応は細胞性免疫と呼ばれる
・T細胞は単独では抗原を認識できないので、マクロファージや樹状細胞のような抗原提示細胞の助けを必要とする。
その際に、ヒト白血球抗原(HLA)が仕事をする。
・HLAは免疫的に自己のアイデンティティを示す
・獲得免疫は、原理的にはあらゆる病原体の抗原に対応可能
■2章:高病原性インフルエンザの脅威・インフルエンザウイルスはA・B・Cの3つ。特に病原性が強いのはA型。
・(*別の章の記述)C型はがんの原因となりうる
■3章:ポリオ・生ワクチンで使用される弱毒性の生きたウイルスは、遺伝子変異を起こして強毒ウイルスを発症させることがある。
その頻度は1/450万ほどの確立
・
一本鎖RNA遺伝子の複製時の変異率は1/1000~1/10000。
ちなみに
DNA遺伝子の変異率は1/1億~1/1000億。
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