なにが凄いかというと、僕が聴いてきたアフリカ音楽の典型にはおよそ入らない音楽がいくつも入っていた事です。民族音楽って、音そのものがそれほど面白くなくても、その土地の文化とか空気感を味わう事で僕は楽しめちゃったりするんですが、このCDに関しては音楽そのもので痺れまくっちゃいました。 その極めつけが、1曲目と13曲目のコントラバスのような音を出すイナンガという撥弦楽器の弾き語り。これがすごい、すごすぎる。たぶんこの楽器、ジャケットに写ってる琴状の楽器じゃないかと思うんですが、ボディがないのに本当にコントラバスみたいな音です。そして語りは囁くようなうめき声で、イナンガは吉沢元治かDidier Petit かというようなドロドロした演奏。このヤバさを聴くだけでも、このCDは買いだ!ついでに、11曲目にイナンガの独奏が入ってますが、これはフリージャズのコントラバス・ソロと寸分たがわない驚異の演奏。ジョン・コルトレーン『live in Japan』でのジミー・ギャリソンのベース・ソロを思い浮かべれば、大体近いんじゃないかと。いや、変な倍音を出す棒で叩くような音も出してるので、こっちの方がすごいぐらいかも。