
北欧のポピュラー・コーラス・グループ「アバ」のアルバムです。僕が子供の頃、アバの大ヒット曲「ダンシング・クイーン」は、スーパーでもバーガーショップでも、あらゆる所で流れてました。それぐらいの大ヒットでした。うちにも兄が買ってきたドーナツ盤がありました。で、小学生の僕ですらいい曲だと思って聴きまくり。詞をデタラメ英語で丸覚えしてました(^^)。今聴くと、「ナイトアーロング」と覚えていた歌詞が"lights are low"だったりして変な発見まである始末です。大体、夜だったら複数形のハズがないのにね(^^;ゞエヘヘ。
で、このアルバムは、その「ダンシング・クイーン」が収録されています。他にも"TIGER"とか"Money, Money, Money"とか"Knouwing me, knowing you"とかの有名曲だらけ。で、徹底してポップ!幼少期から大学生ぐらいまでの僕というのは、徹底してハード路線だったもので(猪木は好きだけど馬場はダメとか、セブンは好きだけどタロウはクソとか、巨人の星はアリだけどタッチは死ねとか^^)、基本的にポピュラーは好みではかった。しかし…ABBAは素晴らしすぎる!!この「ハードは好きだけどポップスはダメ」という嗜好って、それを判断する価値観にあると思うんですよね。で、ABBAはこの価値観を壊してくれたんじゃないかと感じるのです。
僕が言っている音楽上での「ハード」というあり方は、ある意味で簡単です。極端に走ればいいからです。料理に例えれば、極端な量のタバスコをぶっかけるとか、そういうやり方でも実現しようと思えばできる。でも、ポピュラー音楽の心地よさって、そういう事では実現できない。料理でいえば、砂糖をほんの少し減らすとか、わずかに別の食材を足して双方の風味を引き立たせるとか、そういうとっても繊細な事が要求されちゃったりすると思うのです。で、ABBAの音楽はまさにこれ。良く出来ているのです。さらに、曲だけでなく、他にもいい要素がいっぱいある。
例えば、2組の夫婦によるユニットという事。ハード路線の価値観としては、「やるなら男ひとりで勝負しろ」とか、「かみさんと常に一緒に行動とか軟弱だな」なんて感じに繋げて考えちゃう感じでした。小学生でいうところの「男のくせに女と遊ぶなよ」みたいな感じの延長です。これって自分の中ではある意味で正当化されていた感情で、そういうクラスの男子の風潮があるのに女子とデレデレ遊んでる奴って、そういう考え方に対する気付きがないというか、鈍いというか、そう感じるところがあるわけです。ところが、このABBAというグループは、ステージ上で頬を寄せ合ったりキスしちゃったり、そういう事を平然とやっちゃう。つまり、無自覚なんじゃなくって、自信を持ってそういう価値観を選択しているように見えたのです。これは逆に、僕の方がまったく違った価値観を突き付けられた感じでした。コーラスもものすごくきれいだし、しかしメインの女性ツインヴォーカルは、ハーモニー優先ではなくって、えらくエッジの効いた発声で、声を混ぜるという方向ではなくって、あくまでメインとして立っている。英米でなくって、北欧という周縁から出てきているというのも、中心に対して別の価値観を突き付けているように見えなくもありませんでした。これは、中心諸国が差別問題や環境汚染や主導権争いでの醜い争いを繰り広げている中で、北欧はすべての市民が幸福に暮らせるようにと福祉社会を完成させていった状況に似ている。へヴィーメタルやパンクが興隆してく中で、愛やハッピーを歌って、またそこにセクシャルなものも少し絡んで、それをアーティスト自身が実践しているように見えるという所も素晴らしかった。大げさに言うと、荒む方向ではなくて、愛する方向に進む方が実は正しい、みたいなことを教えられてしまった気分で、そういった価値観が徹底されている感じがします。それは、音楽上の特徴に置き換えて言えば、ほとんどの曲が「聴いていてスカッとする」方向に作られてる。その極めつけが、僕にとっては「ダンシング・クイーン」でした。
このレコードをターンテーブルに乗せたのは超久しぶりですが、やっぱり良いアルバムだなあ。そうそう、今聴くと、かなりディスコ要素の強い音楽だというのも、新たな発見でした。。ベースとかシンセがピコピコ鳴ってます(^^)。
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