ここから5年がパット・マルティーノ 黄金時代! プレスティッジから離れたパット・マルティーノが1972年にリリースしたアルバムです。もともとはCobblestoneというレーベルから『The Visit』というタイトルでリリースされていたそうですが、僕が若い頃は入手困難。『Footprints』というタイトルで再発されたCDに飛びついたのでした。編成がちょっと変わっていて、ギター2本のカルテット。しかもギターふたりは役割分担が明確で、ひとりは完全にバッキングのみの担当。メンバーは、Pat Martino (g), Bobby Rose (2nd g), Richard Davis (b), Billy Higgins (dr)。
このアルバムを一言でいえば、
オルガン・ジャズ的なクラブっぽいサウンドとジャズ・インプロヴィゼーションのミックス です。そしてこれが完全に僕のドツボ、派手ではないですが、聴いていると虜になってしまいます。毎度そうなのですが、聴き始めたらもう病みつきで、終わるとすぐにもう一回きいちゃうんです。今回なんて、「これ、どういうアプローチなんだ?」と3回聴き直しちゃいました(^^)。それぐらい好き。
オルガンは入ってないのに「オルガン・ジャズ的」と書きましたが、1曲目を聴いた時は、本当にオルガンかと思ったんです。セカンド・ギターというクレジットを見た後ですらオルガンの間違いだと思ったほどです。ギターはふたりともハイを削ってジャズトーンにしたコンプレッションの効いたサウンド、ベースも「あれ?これってアンプから出た音だけ録音した?」と思ったぐらい、アップライトではあるけどアンプリファイされたコンプレッション・サウンド。そして、曲の多くがモデラートなので、こういう所で僕はクラブジャズっぽく感じたのかも。まずはこのサウンドが、サウンド面でのこのアルバムの印象でした。
ところが演奏は硬派なジャズ。まず、リチャード・デイヴィスのベースとビリー・ヒギンスのドラムがメッチャクチャうまい!
これまでのマルティーノさんは一流半ぐらいのプレイヤーとやったものばかりでしたが、共演者が一流だとこれだけ違うのかと驚き 。ビリー・ヒギンスなんてそんなに叩いてないんですが、それでも「あ、これは違うわ」と感じてしまうのは、サウンドが奇麗で合いの手のはさみどころが絶妙なんでしょうね。一流はすげえなあ。。
そして、
主役のマルティーノがすげえ…。いちおうセカンド・ギターはいるんですが、セカンド・ギター抜きでも成立してしまうレベルまで演奏が完成していたのが、プレスティッジ時代との大きな差。そしてインプロヴィゼーションが鬼 で、ドミナントの処理やら何やらすごい進化していて、「自分がジャズギタリストなら絶対にコピーしてストックフレーズにするな」というカッコいいアプローチが大量にありました。
ウェス・モンゴメリー「Road Song」はコード進行自体が好きな曲ですが、単旋律でその信仰の美しさを見事に掴まえてるのが素晴らしい!ウェイン・ショーター「Footprints」のアドリブは本作の白眉。ジョビン「How Insensitive」は背筋がゾクゾクくるほどの名曲ですが、これはアプローチが面白くて…いやあ、もう全曲名演ですね(^^)。
僕的には、パット・マルティーノの全盛期はここからの5年です。プレスティッジ時代のアルバムも良かったですが、どこかでアルバムごとにセールスポイントを作ったレーベル側の商売っ気が見えたのに対して、ここからしばらくのマルティーノさんのアルバムは、本人がやりたいことだけをやっていて、しかもどんどん極まっていく感じ。マイナーなレーベルから出されたもんで一時期入手困難でしたが、今ならCDで再発されたし結構手に入れやすいかも。
ジャズ・ギタリスト必聴、おすすめです!
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