
ハードロックといって真っ先にあがる名前って、レッド・ツェッペリンかディープ・パープルじゃないかと思います。ロックとは言え、どちらもどこかにイギリスらしい、律儀な感じが残っている気がします。しかし、中学生の頃の自分にとって、ハードロックと言えば、このグランド・ファンク・レイルロードというアメリカのバンドでした。
アメリカって、危ないというか、時としてものすごいガレージな感じがするものが当たり前のように出てきます。文学でも、ヨーロッパ文化からはとても出てこないような、ニワトリ撃ち殺して大陸を浮浪しているような人が世代を代表する作家だったり。連続殺人犯でも、ヨーロッパでは、知的な人が実は…みたいな感じだったりするのに、アメリカの連続殺人犯だと、殺した後に人の皮をはいで鞣して、椅子に張ったりとか。なんか、超えてはいけないラインを、平然と超えていくような過剰さがある気がします。このグランド・ファンクというバンドは、ロックでその感覚を最初に感じたバンドでした。ギターの音は歪み過ぎて音程が分からないほどだったり、過剰で、ぶっ壊しな感じがあったのです。大学の頃に、グランジと言われるロックが流行していて、「すごいグシャグシャで過激だよな」なんて友人が言って聴かせてくれたのですが、中学の頃にグランドファンクで禊ぎを済ませていた身としては、大人しすぎてソフトでいい子ちゃんすぎて退屈でした。スラッシュ・メタルとかデス・メタルという音楽を聴かされた時も同じことを感じました。本当はいいとこの坊ちゃんが不良やってるみたいな、自己演出な感じ。しかし、グランド・ファンクはその逆で、本人たちは自分がまともと思っているが、周りから見ると平然と超えちゃいけないラインを越えてました、みたいな感じです。
やり口もえらいストレートです。大げさに言うと、耳について離れなくなるような短いフレーズがこれでもかと繰り返されます。ものすごい歪んだ音で、爆音で。演奏している本人たちも入り込んでいるのでしょう、それがどんどん速く、どんどん爆音になっていきます。こうなってくると、音楽を考えながら聴くとか、そういうことが出来なくなっていきます。こういう音楽のあり方って、西洋の音楽では、クラシックにも舞踊音楽にも無かったんじゃないでしょうか。もう、音楽の立脚点からして違うのです。
さてこのバンド、デビュー当時の日本の音楽雑誌なんかでは「ヘタ」とかいろいろ言われたそうです。しかし、それは絶対に違うと思います。過剰なサウンドの後ろに隠れていますが、実際にはヴォーカルも演奏も素晴らしいです。たぶん、速く弾くとか、うまく弾くということが眼中にないだけなんだと思います。
でも、「ヘタ」と言われる理由は分かる気がします。スタジオで録音されたデビューした頃のアルバムに問題があるのでは?なんか、素人の自宅録音ですらこんなしょぼい音じゃないだろうってぐらいに、録音がダメダメなのです(T-T)。そんなわけで、デビューアルバムの
『ON TIME』と、次のアルバム
『GRAND FUNK』は、全力で聴かない事をおススメします。あれを最初に聴いていたら、私はたぶん2度とグランド・ファンクを聴いていなかったんじゃないかと。
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