
日本の現代音楽作曲家の石井眞木さんの作品集です。この作品集は独奏や2台マリンバなど、室内楽のなかでも小さ目の編成のものを集めてありました。収録は以下の通り。
1.ブラック・インテンションⅢ op.31
2. 夜の響き op.82
3. 飛天生動Ⅱ op.55
4. ア・グリーム・オブ・タイム(時の閃き) op.53
5. 失われた響きⅠ-ヴァージョンB op.32
石井さんは1936年生まれなので、作曲家として活躍を始めたのは戦後、思いっきり前衛の時代を通過しています。でも1曲目のピアノソロ「ブラック・インテンションⅢ」を聴いてビックリ。思いっきり調音楽、しかもミニマルっぽいです。そこからクラスターがドカンと入ってきたり、別のテンポを持つフレーズが重なってきたり…みたいな感じで、ポストモダン的。それにしてもこのピアノを演奏するのは右手と左手がまったく違うテンポで演奏しないといけないところがあるから死ぬほど難しそう。というか、これを弾ける人ってどれだけいるんだろう。
高橋アキさんすげえ。
以降も色んな技法が出てきて、どれもさすがプロ作曲家という丁寧な響き。荒っぽい所がありません。ただ、ちょっと感じてしまった点がふたつ。ひとつは、あの技法この技法とつまみ食い的なので、何がしたいのか分かりませんでした。そういう意味でいうと、現代音楽の技法やアイデアであれこれと作る職業作曲家と感じてしまいました。
もうひとつは、全体の構造を作るのがうまい人じゃないんだな、と思ってしまいました。部分部分はさすがプロ、パーフェクトな響きで聴き入ってしまうのですが、全体が直線的か、変化してもそれが唐突でうまくない(^^;)。さっきの「ブラック・インテンションⅢ」も、変化するところはいきなりクラスターとか、構造は別のものが別のリズムで折り重なるとか、ちょっと幼稚に思っちゃうんですよね。2曲目の諏訪内晶子さんのヴァイオリン独奏曲「夜の響き」も、サウンドや技法への配慮はプロフェッショナルなのに、全体を感じる事が出来ませんでした。
この傾向ってなんなんだろうかと考えたんですが、要するにこの人は音楽を「何かの絵を描く道具」と考えてるのかも。僕は石井さんのCDを他にも聴いてきたんですが、自分でライナーを書くことが多くて、その曲説明がちょっと恥ずかしいんですよ。曲タイトルも「飛天生動」とか「ブラック・インテンション」とか、ちょっと中2病っぽいじゃないですか。音楽の説明もそういうところがあって、「敦煌石窟に感動して曲を書いた」とか、「左手と右手のリズムを分離して演奏する曲を書いた」とか、作曲のアイデアが場当たり的で、「俺は音楽をこういうものだと思っている!」みたいに突き詰めた作曲とは思えないんですよね。それも悪い事じゃないと思いますが、戦後前衛の時代を通過した日本人作曲家の中にはいると、軽い作曲に感じました。そんな石井さんのイメージが変わったのは…また次回(*゚∀`)ノ!
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