ギルガメッシュといえば、僕の世代ではシュメールの叙事詩ではなくエロい深夜番組「ギルガメッシュ・ナイト」(^^)。そこにレギュラー出演していたAV女優が飯島愛さんでした。あの番組をきっかけにバラエティタレントへと転身、でも芸能界から足を洗って、直後の36歳で自宅で孤独死しました。この本は飯島さんの半生を綴った自伝で、2000年の発売当時、本の帯に書いてあった「あなたのお尻の穴に私の舌を入れさせて」に魅了されて買ったのでした(^^)。キャッチコピーって大事だなあ。
この本は、飯島さんが若い頃からつけていたという「感情の日記」をもとに、飯島さん本人が自分の半生を振り返る構成でした。厳しい親の教育で自分の居場所がなくなり、中学から家出を繰り返し高校でドロップアウト。歌舞伎町のディスコに入り浸り、水商売の世界に入って、ニューヨークに留学したいという夢の前で1000万という契約金に目がくらんでアダルトビデオに出演して…こんな感じでした。
読んでいて胸が締め付けられたのが、夜の商売をしていた頃の男女関係の話。金を稼がないといけない&男相手の商売をしてる、これで彼と嫉妬と焦りが入り乱れる関係になってしまって、互いに好きなのにうまくいかず、ある日家に帰ると彼の荷物が全部なくなっていて…。こういうのって、けっこう多くの人が体験する事だろうし、だからありふれていると言えばそうなんだろうけど、これを自分で体験すると自殺したくなるほどつらいんですよね。。僕はキャバレーやらシャンソンやらのお店でラウンジピアニストをして食いつないでいた時があるもんで、こういう話は他人事とは思えませんでした。胸が痛いよお。
なぜこういう事になるかというと、若すぎて互いを生かす倫理観を確立できていないから…互いがエゴになりすぎず、色々とうまく立ち回ればここまで精神的なダメージを追わずに済むんだろうけど、若いからまだそういう手管を身につけていなくて…みたいな。2021年末にある芸能人の人がホテルから落下して死にましたが、あれも考えが若いから起きてしまった悲劇と思えてしまうんですよね。こういう悲劇を防ぐ知恵として昔は社会倫理とか宗教とかがあったんだろうけど、現代はそういうものが力を失っちゃって、その代わりになるものも確立してないから、どうしてもこういう悲劇が防げないんだろうな、みたいな。
そういう弱肉強食で切ない世界で確立されるモラルが悲しくも感じました。性善説を前提にしても性悪説を前提にしてもモラルって築けると思うんです。でも後者をもとに築かれるモラルって「だまされるから人を信じるな」「油断している自分が悪い」みたいな感じになっていくわけで、それはそうなんだけど寂しいですよね。そういうモラルを築かざるを得なかった飯島さんが哀しい。
売るためだと思うんですが、帯のコピー、序文、エピローグと、目立つところはエロい言葉で埋め尽くしていましたが、実際の内容は2000年版の『ヤヌスの鏡』か『積み木くずし』に感じました。タレント本あるあるですが、やたらに文字が大きく行間も広いので、1~2時間もあれば全部読めてしまうと思います。こういう経験をしたことのある人は胸が痛すぎ、知らない人は社会勉強になる、いい本だと思いました。飯島さん出演のAVって全然エロくなくて好きじゃなかったけど、バラエティタレントになってからの忖度なしの歯に衣着せぬトーク力は素晴らしくて好きでした。杉本彩さんが自分はエロの女王みたいに言っていたのを、「そんな大したもんでもねえだろ」みたいに突っ込んでたのは痛快でした(^^)。長生きしてほしかったなあ。
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