
柴田南雄(みなお)先生、色んな音大で教えていた人で、20世紀音楽研究所を設立した人でもあります。さらに、作品よりも著作を先に読んでいた事もあって、僕の場合は作曲家というよりも音楽教師や研究家というイメージが強いのですが、ちょっとだけCDを持ってます。そのひとつがこれ、数少ない交響曲の中のひとつ「ゆく河の流れは絶えずして」を収めたものです。他に「北園克衛による三つの詩」が入っていて、僕のお目当てはこっちでした。なんといっても、
日本でかなり早い時期に12音列技法を使った作品ということだったので(^^)。指揮は若杉弘、演奏はソプラノ伊藤叔、東京都交響楽団、東京混声合唱団。
交響曲「ゆく河の流れは絶えずして」は、2部に分かれていました。前半1部は…う~んなんだこれは、多様式…というんでもないですね、しいて言えばコラージュでしょうか。5楽章に分かれてますが、古典派みたいな作曲様式の楽章もあれば、ロマン派みたいな楽章も現代調もあって、なんだかツィンマーマンみたいだな…な~んて思ってると、5楽章は思いっきり音列技法…と思ったら、急に無伴奏合唱で方丈記を読み始めた(^^;)。。う~んこういうコラージュ作品って、音楽とは違うと思ってしまうんですよね、だって、すでにある音楽を切り貼りするだけなら、別に音楽家じゃなくたって出来るじゃないですか。単に音符を構造化するだけでなく、色んな技法があるなかでどういう技法を使うか、あるいはそこから進んだ技法を作りだすのか、そういうものを含めて作曲だと思うんですよね…。ただ、それぞれはよく出来ていて、なるほどさすがに先生だなと思いました。個人的な趣味は、1楽章に戻る8楽章の構造と、そのサウンドでした(^^)。
「北園克衛による三つの詩」。これはソプラノと管弦による曲で、12音列技法を使ってます。この詩人について何も知らなかったんですが、詩はすごくシュール。「白い食器、花、春の午後3時、白い、白い、赤い」みたいな感じです。もしかして、音節が切りやすくて音列技法を使いやすいからこういう詞を選んだのでは(^^;)。音列技法の作品としてはシェーンベルクの音列技法初期作品みたいで、ちょっとぶっきらぼうに聴こえました。
柴田南雄さん、作曲家としてはいちはやく音列技法に着手したり、管理された偶然性を取り入れたり、図形譜や電子音楽に取り組んだりと、時代の先端の技法を自分に取り組んだ人です。前衛なのかと思って聴いてみたのですが、それ以上に研究家としての資質が高い人なのかも知れません。なにせ新しい作曲技法が次々に誕生した時代だったので、柴田さんみたいな人が音大の先生でいてくれたことは、日本の作曲界には大きなプラスだったんじゃないかと思います。
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