バディ・ガイやオーティス・ラッシュあたりと一緒にシカゴ・ブルースを進歩させたミュージシャンときいていたので、もっとロックなバンド・ブルースかと思ってたんです。ところが、1曲目「That’s All I Need」がサム・クックかサザン・ソウルあたりを連想させる爽やかでほんわかしたソウル・ミュージックみたいな雰囲気で、肩をすかされたように感じた高校生の頃の僕でした。 このゆるい印象に輪をかけたのが、高くて細い声のヴォーカル。同時代のバディ・ガイやオーティス・ラッシュにしても、ちょっと先輩のサニー・ボーイ2世やハウリン・ウルフやマディ・ウォーターズにしても、シカゴ・ブルースってだみ声で叫ぶ不良中年オヤジ感が正義みたいな所があるじゃないですか。それがさわやか青年みたいなヴォーカルを聴かされたものだから、軟弱に感じちゃったんですよね。 ところがいま聴くと、声が奇麗でもそれはそれで違う色のブルースとして面白いし、さわやかな曲想でもソウルとブルースとロックのかけ合わせみたいで面白く感じるんですが、若い時はそういう聴き方ができませんでした。まあ、若いというだけでひとつの価値観しか持てない未熟者確定みたいなものですからね(^^;)。この1曲目の爽やかでゆるいイメージが強烈すぎて、このアルバムはそういう音楽だと記憶に深く刻まれてました。
久々に聴くと、「I Feel So Good」や「All Your Love」、さらにインストの「Lookin’ Good」あたりはジミヘンのルーツみたいにえらくロックでクソカッコいい!「I don’t wat no woman」「I found a new love」なんて、なるほどオーティス・ラッシュばりにダークでやさぐれたバンドブルースで、これもカッコいい!さらに「My Love Will Never Die」まで来るとさわやかの「さ」の字もない超絶な暗さ(途中でちょっと演奏ミスってますけどね^^;)。いやあ、このアルバムって実は1曲目を飛ばして聴くと印象がまったく変わるんじゃないかと思いました。そう思ったところで、昔も似たような事を思ったな、なんて思い出したりして。
というわけで、「That’s All I Need」のサザエさん的なゆるさがあまりに印象に強く残っていたアルバムですが、それを除けばロックに近づいた60年代のシカゴ・ブルースの典型じゃないかと。記憶とはぜんぜん違うカッコよさでした…が、声が細いのはやっぱり趣味じゃないかも(^^;)。僕的には歌わずにギターに徹していてくれた方がより好きになったかも知れないブルースマンです。