
ブラジルのクラシック・ギター・デュオのアサド兄弟によるラテンアメリカ音楽集です。取り上げている作曲家が面白いので、思わず買ってしまった1枚でした(^^)。日本のメジャーレコード会社が作るクラシック演奏家のCDって、「またアルハンブラの想い出かよ」みたいに、有名人の有名曲ばかりの上に古くさかったりしますが、ラテン系クラシックって、有名無名を織り交ぜ、しかもそのセンスがいいものが多い印象。さすがにワーナーが力を入れて売り出しただけの事はあるギターデュオ、本物でした(^^)。
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ピアソラ:タンゴ組曲Tango suite
・ブローウェル:ミクロ・ピエサスMicro piezas
・パスコアール:ベベ Bebe
・ジナタリ:組曲<肖像>から Retratos
・S.アサド:珊瑚の市レシーフェRecife dos corais、ヴァルセアーナValseana、大鬼蓮Vitoria Regie、跳躍 Pinote
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ヒナステラ:バレエ《エスタンシア》から「たそがれの牧歌」(J.M.サラテ編)
ピアソラ「タンゴ組曲」は、アサド兄弟に献呈された曲だそうです。というわけで、これぞオリジナルですね(^^)。いかにもピアソラ風タンゴといった感じでした。
ブローウェル「ミクロ・ピエサス」。ブローウェルの作品は時代によってけっこう作風が変わるんですが、これは初期の作品で、けっこう前衛性が強くてメチャクチャカッコいい!前衛といっても理屈だけの音楽ではなくて、かなり熱いんですよね、さすがはキユーバ。
パスコアールはブラジルのマルチ楽器奏者で、なんともいえない音楽を大量に生み出しています。「ベベ」はかなり有名な曲で、いかにもブラジル的なポピュラー音楽風の曲ですが、ギター二重奏版を聴いたのは初めてでした。すっごい速さで演奏していてビックリした!
ジナタリ「組曲<肖像>から」。ジナタリって聞いてピンとこなかったんですが、ニャタリの事なんですね。ニャタリはブラジルの作曲家で、クラシックとポピュラーの両方で活躍している人です。というわけで、曲はけっこうポピュラー音楽的な機能和声。
セルジオ・アサドの曲は、プレイヤー作曲家の曲と馬鹿に出来ないほどよく出来ていて、むしろギターを演奏できる人じゃないと、こういうギター的な奏法を駆使した曲はかけないんじゃないかと感じました。ただ、クラシックギターのプレイヤー作曲家の曲って、やっぱり普通の長調/短調か、モードぐらいのものが多いんですよね。。
ヒナステラはアルゼンチンの作曲家で、このCDで取り上げられた作曲家の中では唯一の作曲の専門家です。ある時期以降のラテンアメリカの作曲家は、ラテンアメリカのアイデンティティというものを相当に意識して作品を書いていて、ヒナステラのこの曲もそういう印象でした。でもその作曲はあくまでロマン派音楽の中でどう南米を表現するか、みたいな感じでした。
ギターがとんでもなくうまいもんで、耳がついつい細かい技巧的なところばかりにひきつけられてしまうんですが、よく聴くとラテンアメリカのギター音楽って和声面が19世紀的なものが多くて、そこがちょっともう一声かな、って思ってしまいました。ハートとかアイデンティティとかそういうところを重視するのは分かるんですが、それを言い訳にして作曲技法の追求が雑になってる気がしてしまうんですよね…。良かったのはブローウェルの曲の1曲目、これは素晴らしかったです!
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