
ひとつ前の記事の、
スコーピオンズのファースト・アルバムと同じように、ドイツ産のアートロック的なアルバムをひとつ。エンブリオというグループの発表したセカンドアルバムです。日本タイトルは「胎児の復讐」。
僕が初めてこのアルバムを知ったのは、「ジャーマン・プログレッシブ・ロック」という脈絡からでした。若い頃、ロックといってとにかくハマったのが、サイケデリックとかプログレッシブというジャンルのロックでした。うまいとかヘタとか、そんなのはどうでもよくて、とにかく独創的な音楽が大量にあって、面白すぎる。。プログレというと、イギリスの
キング・クリムゾンあたりを真っ先に思い浮かべてしまう僕にとって、このアルバムでのエンブリオは、プログレというにはあまりにサイケ。このニュアンスは、多くのジャーマン・プログレと呼ばれるグループに当て嵌まる気がします。すごくドロドロのジャム・セッションのような音楽が多いんです。
そして、このアルバムです。やっぱりこのアルバムも、すごく印象的なリフをぐるぐる繰り返すうえで、えらくエキゾチックな感じのフルートやオルガンが延々とアドリブを取るとか、そういう感じ。また、バタとか、アフリカ系なんじゃないかというような民族打楽器が入り込んだりして、すごくエキゾチックな感じがあるのも特徴。「プログレ」という触れ込みで聴いたものだから、どうしてもキング・クリムゾンのような超絶技巧で白熱の演奏に、現代音楽やらジャズやらが乱れ飛ぶものを期待してしまったもので、最初に聞いたときはちょっと肩透かしを食らったような気分。しかし…これが
聴いているうちに、異様に病みつきになる。同じリフ・パターンの上を延々とジャムするものだから、なんか呪術的な陶酔状況に入り込んでいくというか…。同じところをぐるぐる回りながら、どんどん高揚していく民族音楽ってありますよね。
バリ島のガムランとか、
チベットの仏教音楽とか、トルコのイスラム教の旋回舞踊とか。あんな感じで、どんどん意識低下していく感覚。酒に酔った時に、少し意識がぼうっとする時の気持ち良さってあるじゃないですか。あんな感じ。いやあ、これは素晴らしい。
また、ぜひお勧めしたいのが、ボーナストラック入りのCDです。僕がこのCDを買った頃、LPには未収録のジャムセッションが、ボーナストラックで2曲入ってました。"Tabarinman's Return"という曲のパート1~2というヤツなんですが、これがまた延々と続くジャムセッションで、いつ終わるとも知れずに垂れ流しなんですが、これもハマる!なぜエンブリオというグループが民族音楽的な方向性を持ったのか(楽器だけじゃなくて音楽性も)、そこにどういう思想を見出したのか、こういう所を考え始めたら面白くて仕方ありませんが、まずはこの音楽の独特の「ジャーマン・プログレ」的な感覚を体験するというだけでも素晴らしい事なんじゃないかと思います。きっと、「おおお~すげええ!!」とはならないと思うんですよ(笑)、でも、ジワジワ来る。ジブの意識の状態が変わっていくのがわかる、陶酔の音楽です。おススメ!
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