レーベル「Unesco Collections」がリリースした
ウクライナ の民俗音楽集です。録音自体はウクライナ独立前のものらしいですが、かなり音がいいので古くても1980年代録音じゃないかと。
このCD、昔から欲しかったんですがなかなか見つからなかったんですよね。僕は中古レコード屋でエサ箱を漁るのが好きで、その中から探しているものをどんどん買っていくスタイルだったのですが、これはどうしても見つからず、とうとうアマゾンでポチった一品でした(^^;)。ワールドミュージックのCDって、中古屋で見つけられえば安いけど、ネットで買うとけっこう高かったりします。それってつまり数が少なくて、それを売れないものと見るかレアものと見るかの差なんでしょうね。
このCD、7割がたが無伴奏の歌 で、そのほとんどが何人かで歌うものでした。農家のおばちゃんたちが歌っているようなもの(といってもフォークアンサンブルの名称がクレジットされているのでプロなのかも)はユニゾンの斉唱が原則でしたが、要所でハーモニーになったり、人数が増えたり減ったりとなかなか構造的。コブシの入り方が東欧的というか、聴いていてほとんどがユニゾンとは思えない素晴らしさでした。
もう少し組織されたグループの合唱になると、ハーモニーが
アルバニア や
正教系の無伴奏合唱 に通じるものに近づく感じでした。というか、ヴォイシングはまさに正教会系のそれで、33曲目「Chumak song」なんて間違いなく宗教歌で、
曲も合唱もものすごい素晴らしさ 。でもどこか民俗音楽っぽさが入ってくるものがあるのがなんとも独特。スラヴ系民族の合唱というと、この近辺ではグルジアやブルガリアが有名ですが、僕が聴く限りでは他の地域もみんなすごいです。
他には、伴奏つきの独奏が何曲か入っていて、伴奏楽器はヴァイオリン(バグパイプ?)だったり撥弦楽器だったりするんですが、特に
撥弦楽器バンドゥーラ を伴奏にした歌が素晴らしかったです。まるでルネサンス音楽のよう で、魂を持っていかれてしまいました、凄い…。本当にこれが現代も歌われているのでしょうか、そうだとしたらなおさらゾクッと来るなあ、凄い…。
他で入っていたものは、牧童の笛っぽい音楽や、インストのアンサンブル。アンサンブル音楽は、打楽器や弦楽器も入ってるんですが、匂いがバルカン・ブラスっぽい感じ。そんな中、M11「The reapers」やM27「The seducer」は、僕には
クレズマー そのものに聴こえましたが、もしかするとバンド音楽は政治的に西からもロシアからも迫害されたユダヤ教徒さんたちの音楽なのかも。
ちょっと感動したのは、M29「On the wide Danube」。無伴奏合唱はスラヴの農民さんたち、ブラス音楽はユダヤ教徒さんたちの音楽だと思っていたのが、お祭りでの舞曲みたいなこの曲で何と共演!同じことが終曲「Arcan: The lasso」にも言えて、今度はクレズマー・バンドに地域楽器のバンドゥーラが入り込んでいました。戦争ばっかりしてないで、こうやって仲良くしていけたら人間って幸せになれると思うんだけどなあ。。
ウクライナの民俗音楽、バルカン半島の音楽と正教会系の音楽のミックスに聴こえましたが、どれもレベルがかなり高かった です。バルカン半島の音楽より洗練されて聴こえたのは、ウクライナの方が繫栄の歴史がある分だけ都会的なのかも知れません。素晴らしかったです!
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