
若い頃は、駅で電車を待っているときに、飛び込み自殺で電車が遅れると、ムカついてました。「ああ、急いでるのによお…」みたいな感じ。しかしいつからかこの感情が変わって、哀れに思うようになりました。飛び込み自殺をするなんて、余程の事があったんだろうな、と…。
飛び込み自殺まで行かないにせよ、精神がボロボロで、泣きたくなる時ってありませんか?泣いたり愚痴を言ったりすると、精神も肉体も回復が速いそうですね。数日前にテレビでやっていたのですが、ある科学的な実験で、意図的に傷をつけた被験者が、そのことについて愚痴を言うのと言わないのとでは、愚痴を言う方が傷の治りが4倍速かったそうで。いやあ、エセ科学っぽくてにわかには信じがたい話ですが、「泣くとすっきりする」という事が実際にある以上、当たらずとも遠からずなのかも知れませんね。しかし、小さい時から「男というのは…」と自分を鍛えてきてしまった僕は、そう簡単に泣く事が出来ないんですよ(^^;)。小さい頃は泣き虫だったくせに、「泣いちゃいけない」と自分を訓練してきたものだから、大人になったら泣こうと思っても泣けなくなってしまったのです。最近、すごくつらい事があって、本当につらくて、それでも泣けば少しは気が晴れるだろう…と思ったのですが、泣く事が出来ない。そこで聴いたのが、ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」でした。
いままで出会ってきたバラードのうちで、いまだに最も素晴らしいと思う曲です。ピアノ独奏もありますが、管弦での演奏もあります。特に、ホルンの響きがこの世のものとは思えないほどに美しい管弦楽版が好きです。官能の極みというか、俗世間からは完全に離れた所で響いている音。あまりにも有名な名曲なので、この曲を好きだという人はたくさんいると思います。僕も、この曲の録音をいくつも持っています。その中でもけっこうお気に入りなのが、このクリュイタンス指揮・パリ音楽院管弦楽団による、1962年録音の本作。木管がちょっと速かったりして、部分的にオケ全体のテンポ感があってないんですが、弦のアンサンブルの音の溶け具合が素晴らしいのです。
なかなか素晴らしい一枚。他の曲の演奏も実に見事。「亡き王女のための~」でやらかすオーボエも、「クープランの墓」のソロは見事。ラヴェルという作曲家は、フランス音楽の流れで、独特な和声を使った作曲家ですが、しかしそれが前衛に走るのではなく、官能的に音を響かせたという所が素晴らしすぎます。
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