『Mal Waldron / all alone』

MalWaldron_AllAlone.jpg これは、マル・ウォルドロンのピアノ独奏のアルバムです。全曲オリジナル。個人的には、マル・ウォルドロンの録音の中で、このレコードがダントツで好きです。隠れたジャズの大名盤、僕はそう思っています。

 やっぱり、ステレオタイプ的な「ジャズ」には当てはまらないというか、非常に重い音楽と演奏が並んでいます。僕は、音楽というものを、何かの感情を表現したものと考えるのは嫌いな人間なんですが、ことウォルドロンの音楽に関しては、「悲しみ」「怒り」「憂鬱」「抑圧」…なんか、こういうものを音楽で表現したかったんじゃなかろうかと思いたくなってしまうような何かがあります。腹の底にズシンと来るような、ジワジワとした迫力。

 音楽的に言えば、やっぱりジャズ的な語法が用いられているとは言えるんですが、それが音楽のアレンジで大変に効果的に用いられると感じます。例えば、機能和声の音楽だと、ドミナントと呼ばれるいうコード機能が非常に重要な役割を発揮するんですが、ジャズではこのドミナントを演奏する時に、意図的に5度音を半音あげたり下げたりして演奏する事が多いです。これはいろんな理由があったと思うんですが、今では常套句になってしまって、それがものすごく流暢に演奏される。ところが、このアルバムの3曲目"A VIEW OF S.LUCA"では、まさにその減5度そのものが強調され、この曲の印象を決定づけるかのようになっています。もう、装飾的に音を追加したり変化させたりするというレベルではなくって、根本的な曲の構造の骨子となっている音自体を変化させてしまうという、アレンジャーのようなピアノの演奏の仕方。こういう、その曲を決定づけるような「何か」がどの曲にもあって、それが非常に明確に提示される。これは一演奏家というよりも、限りなく作曲に近い演奏です。

 そんなわけで、演奏がうまいとは言えないと思いますが、そんなものは全部吹き飛んでしまうほどの音楽。このダークな色彩感覚の中では、アフター気味のリズム感覚も、同じフレーズを繰り返し続けるアドリブ・パートも、全部が世界観を作り上げるためにやっているのではないかと思えてきてしまうほど。いやあ、素晴らしい音楽、このアルバムも一生聴き続けるんだろうな、もう20年以上聞き続けているわけだし(^^;)。。



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Bach Bach

Author:Bach Bach
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ずっとつきあってきたCDやビデオの備忘録をつけようと思い、ブログをはじめてみました。
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 今月号のintoxicateに載っていた1枚。「Vyacheslav Artyomov」、ロシアの作曲家は名前が読めなくってムズカシイ。。「ヴャチェスラーフ・アルチョーモフ」と読むらしいです。伝説の「フレンニコフの7人」のひとりとの事ですが、それって何かすら僕は知らず(^^;)。作風的には初期は新古典的、後に民族的な様式、十二音技法や、複調性、ミニマルなんかも用いたみたい。ロシアの前衛は強烈なものが多いので、聴いてみたいです。アマゾンで買おうと思ったらダウンロード版しかなかった(;_;)。 少し前に取りあげたエリザベス・コットンですが、ライブ盤なんてあるのか?!これは聴きたい… オスマン時代から現代までのトルコ音楽のガイド本みたいです。おおお~、これは絶対に読もう!! レコ芸に載っていた近藤譲さんの新譜、室内楽作品集みたい。好きな作曲家なんで聴きたいんですが、持っている2枚のALM盤と4曲かぶってるので悩み中…
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