
1983年7月公開の日本映画です。やくざ映画ご用達の出演陣からして、東映映画と思いきや、フジテレビが大元になって実行委員会形式で作られた映画でした。ここがカギだった気がします。
映画は実録もの…渡瀬恒彦さんが出演してると、どうしてもこういう言い回しになっちゃうな^^;。1957年に日本が南極に送った観測隊が、悪天候のために連れて行った犬ぞり用の犬を南極基地に多数置き去りに。しかし1年後に戻ると、なんと2頭の犬が生きていた、という物語です。
僕はこの映画を2回観ました。1度は小学生の時に映画館で、2度目は中学の時に学校の授業で。そんな子どもの頃に観た印象は、2回とも微妙…。良かった点といって、「犬の演技が凄いな」なんてものしかなかったんですから(^^;)。だいたい、犬たちが置き去りにされて可哀想と思えばいいのか?犬が生きていて良かったと涙すればいいのか?人間のエゴに怒ればいいのか?「はい、ここで泣いてください」みたいに作られた安っぽいドラマに思えて、子ども心にも妙に気にくわなかったのでした。いかにも後づけな人間ドラマも、鼻につきましたし。
ただ、子供のころの僕には、この映画を「つまらない」といえない理由があったんです。まずは映画館に行った時。
『里見八犬伝』もそうでしたが、姉が連れて行ってくれたんです。姉だってまだ子供、バイトしたにしても小遣いなんて雀の涙ほどしか持ってないだろうに、おごってくれたんですよ…。この状況でつまらないとは言えず、面白かった演技をしたんです。姉が「楽しかったならよかった」と笑ってくれると、ホッとしたりして。映画の内容はともかく、、姉と映画に行ったのはいい思い出です。
2回目の学校の授業。友人たちとは「自分たちで犬を置き去りにしといて、再会した途端に感動の音楽が流れるって、この映画を作ったやつの神経を疑うよな。大人そのものだよ」とか「こんなんで簡単にだまされちゃう単細胞なやつはいいよな、おめでたくて」などと、ボロクソに酷評したんです。でも、
この映画って世間的には感動巨編という事になっていて、感想文では褒める事・感動する事が要求されていると思っちゃったんですよね。だから、みんな突っ込みまくってたのに、いざ感想文となると、借りてきた猫のようにおとなしくなって…ああ同調圧力。
でも僕みたいに、内心「つまらねえな、突っ込みどころしかねえじゃねえか」と思った人って、意外と多かった気もするなあ(^^;)。 テレビ局が作るPTA推奨のお涙頂戴のドキュメンタリーって、けっこうありますよね。表立って否定しにくいものを持ってくるんですが、それと作品のクオリティは別。そのお涙頂戴を商売にしている事は見とかないといけないし、この映画に至ってはその涙だって後から作話して付け足したものですし。これは変形の感動ポルノであって、壮大な南極の映像を見せたいなら、せこい芝居打ってないで、正面からドキュメンタリー作ればいいんですよね。こういう意見って制作陣に言ったら「観客を動員しないといけないから」とか、ずれた返答がきそうですけど…。一線級の俳優を使い、南極ロケまで実現しながら、このレベルの映画しか作れなかったあたりが、いかにもテレビ局主導のプロジェクトとも、80年代の日本映画とも感じました。
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