大バッハのオルガン曲は、全部聴こうと思ったらとんでもない量。時間もお金も大変です。というわけで、僕みたいなちょっとかじりたいだけのシロウトは選集あたりに留めておくのが無難…でも何を選んだらいいのでしょうか。
このCD、バッハのオルガン選集にしてはけっこう選曲が渋いです。もちろん「チロリ~ン、鼻から牛乳~」でおなじみの「トッカータとフーガ ニ短調 BWV565」は入ってるんですが、なぜ2枚組の作品集で渋い選曲をするんだろう。その理由は…
ホテルについてる結婚式用の教会で、オルガン演奏のアルバイトをした事があります。その時に、僕と交代で演奏していたオルガニストの女の子に「バッハのオルガン曲のCDでおすすめあったら教えて」ときいて、推薦してもらったのがこのCD。その子が言うには、「
バッハのオルガン曲の神髄はコラール」とのこと。
コラールとは、プロテスタント教会で歌う讃美歌で、この形式を使った曲もみんなコラールっていうんだそうな。そして、このCDを聴くと…おお~なるほど、曲名のうしろに「コラール・プレリュード集より」とか「18のコラール集より」と書いてあるものがいっぱい。つまり
このCDの選曲は、有名かどうかじゃなくて、優れた曲かどうかで決めたんじゃないか、な~んて思うわけです。
さて、音楽。こういうCDのオルガン演奏って、いわゆるチャーチ・オルガンという教会ごと楽器になってるようなヤツを演奏するじゃないですか。だから、ただでさえ音がボワ~ンと回り込みまくりなのに、オルガンって鍵盤から指を離さないとず~と音が鳴ってるもんだから、何やってんだかわからないような凄い事になりそうですよね。でも…いやあ、こんなにきれいに響いちゃうんだ、きっと考えまくって作曲したんだろうなと感心しちゃいました。バッハってオルガン演奏の名手だったらしいですけど、この楽器の鳴り方にまで精通してたんだろうなあ、すごいです。あ、このCDに入ってる曲でいうと、
「我らの救い主なるイエス・キリスト」のBWV666の方と、
「われ汝の御座の前に進みいで」BWV668 が、個人的には好み。心が洗われるようで、どちらも「18のコラール集」の中の曲。あと、
パルティータ「おお汝正しく善なる神よ」BWV767は、まさにパルティータで同じ主題を執拗に使っていました。
コラール・パルティータというのを僕が聴いたのは人生で多分この曲だけ。17世紀バロックというよりルネサンス音楽に近く感じでした。
「幻想曲 ハ短調 BWV 562」、これは宗教曲とフーガが混然となったような雰囲気で、なんとも言えない魅力がありました。
演奏は…こっちの世界にまったく疎いものだから、いいか悪いかまったく分かりません(。・・。)。でも、聴いていて不満に思うところはなにもありませんでした。不思議に感じたのは、いかにも「ジャ~ン」みたいなオルガンの音だけじゃなくて、
サンポーニャみたいな音になる時があるんですね。これって、教会のそのオルガン特有のものなのかなあ。ちなみに、このCDで演奏している
グスタフ・レオンハルトは、オルガンやチェンバロといった鍵盤古楽器リバイバルの先駆者で、こっち系のCDを漁るとよく出会う人です。
音は…僕はこういうチャーチ・オルガン系のCDを何枚か持ってるんですが、低音なのか中音なのか、そのへんが充実してなくて、高い方ばっかり鳴ってる感じでした。このCDもそうで、ちょっと物足りないと思ってました。でも今回、「残響がすごい教会でそんな音域を充実させた楽器を使ったら、それこそ倍音だらけになって不協和音程だらけになっちゃうから、実際の教会の音も実はこんな感じなのかな」と思い直し、うちにある大きいスピーカーで(僕、スピーカーを3本持ってます、いいでしょ!)、大きい音で聴いたら…おお~これは気持ちいい!このCDを充実した音で聴きたかったら、いいオーディオセットで、音を大きめにして聴いたほうがいいかも。小さいスピーカーと大きいスピーカーでこんなに聴こえ方の違うCDも珍しいと思っちゃいました。
というわけで、選曲は渋めで有名曲少なめだけど曲の内容は最高な、バッハのオルガン作品集でした!
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