『John Coltrane / Blue Train』

JohnColtrane_BlueTrain.jpg 1958年、ジャズのテナー・サックスの巨人・ジョン・コルトレーンが、フリージャズどころか彼の黄金のカルテットを結成するよりも以前に残した、唯一のブルーノート盤です。ブルーノート唯一のコルトレーン録音だから『Blue Train』なのかな?まあ、色々な意味がひっかけてありそうですね(^^)。

 僕にとってのコルトレーンの音楽の好きな順というのは、レギュラーバンドでのフリー期>マッコイやエルヴィン・ジョーンズ在籍期の黄金のカルテット期>それより前、という感じです。で、このブルートレインは、「それより前」という時期のもので、簡単にいうと、最も「普通のジャズ」っぽい時期。この時期にも、昔のジャズ雑誌では『My Favorite Things』『Giant Steps』などなど、大名盤扱いされているレコードが何枚もあるんですが…う~ん、僕にはどうしても「普通のジャズ」にしか聴こえなくって、悪い音楽とは全然思わないけど、取り立てて褒めちぎるというのが理解できませんでした。というのは、「これを褒めるんだったら50年代バップのレコードのほとんどを褒めないとウソだろ」、という感覚。何故これだけが…という感じなわけです。とか言っておきながら、この時期のコルトレーンの中で、僕のこのレコードの再生機会はかなり高いのです(^^)。特徴としては、3管編成という所でしょうか。そして、他の作品ではなくって、なぜこのアルバムをよく聴くのかというと…1曲目の「ブルートレイン」のアンニュイなムードがこのアルバム最大の特徴の気がします。というか、ブルートレインが入ってなかったら、ゴマンと出ている他の50年代ジャズのアルバムとの差が本当に何もなくなってしまう気がする…。

 この曲は、曲の構成も典型的なハードバップだし、アレンジも普通。しかし、なんというのかなあ…なんか、すごく「ブルー」なんですよね、色彩で音楽を表現すると。で、これがどういうわけかすごく好きなのです。さっき言ったように、何から何まで普通なのに、なんで良いと感じてしまうのか、自分でもよく分かりませんが…敢えて言うと、和音が好きなのかも。それも、和声理論とかの面倒くさい話じゃなくって、最初は1声だったのが、同じメロディラインで3声のハーモニーに増えていく…子供の合唱のような、ものすごくシンプルな意味での「和音の美しさ」というものが、単純に心地よいんじゃないかと。しかし、一発録音なもので、アンサンブル中にボントロが間違えたりするんですが(^^;)。

 もうひとつは、トランペットのリー・モーガンの演奏がスバラシイという点!リー・モーガンというトランぺッターはリーダーアルバムをたくさん出しているんですが、それが結構詰まらなかったりする(^^;)。つまり、名プレイヤーではあるけれども、名ディレクターや名アレンジャーや名バンドマスターという訳ではないという事な気がします。リー・モーガンと言って一番よく名前の挙がる名盤扱いのレコードなんて、「これの何が面白いんだ?」と思ったものですが、しかしこのブルートレインでのモーガンさんのソロプレイは素晴らしい!!!そこには、単純に「普通のモダン・ジャズのソロ・アドリブ演奏」を聴く楽しみがあります。要するに、バップ系の音楽を聴きたいという気分でさえあれば、このアルバムを聴いておけば堅い、という感じ。オーソドックスなモダン・ジャズって、大体はコーラス形式になっていて、曲のテーマパートを演奏し終わった後は、同じ和声進行を使って、アドリブ・ソロを演奏する事がほとんどです。しかし、音楽をやっている頃、この「アドリブでソロを組み立てる」というのが、非常に難しかった。スケールを使ったりコードトーンを使ったり自分のストックフレーズを使ったりしながらメロディを組み立てていくわけですが、どういう順で音を並べるとそれが良くなったり悪くなったりするのか、これが本当に難しかった。単にスケール音から音を並べて作るだけだと、どんな順で並べようがどれも同じようなものになっちゃったんですよ、僕の場合(>_<)。そんなわけで、有名なミュージシャンのアドリブの組み立てというのは、どんな楽器だろうが真剣に聴いてました。で、1曲目のブルートレインのリー・モーガンのソロは素晴らしい!!モーガンは、他にも最終曲“LAZY BIRD”で素晴らしいソロを聴かせてくれます。というか、レイジーバードのファーストソロはモーガンで、ここに至っては完全に主役!音の選び方だけでなくって、トップでは勢いよく演奏するとカッコよく聞こえるのか…とか、本当に「アドリブソロのおいしいテクニック」みたいなものを、この人のプレイからは色々と学ばせて貰いました。
 一方、主役のコルトレーンのこの時期のアドリブソロというのは、かなりコード進行に対してどうスケールを選択するか、みたいな感じで、練習を聴いているみたいな感じなんですよね。ジャズ曲というのは、主調に戻る直前が一番和声的には美味しい事になって、例えばスケールだけでいっても選択肢が格段に増えます。更に、理論から外れるような音を挟み込んで行っても、それがかっこよくなる可能性があるのもこの辺り(普通の所でこれをやっちゃうと単なる音痴になっちゃう^^;)。こういう所ではさすがは巨匠と言われるだけの事はあって、非常に面白い動きというか、「コルトレーン的」な演奏になって、これはカッコいい!!ただ、そうでない所が、黄金期~フリー期のコルトレーンが多用した「あるおいしいメロディのヴァリエーションを発展させる」とか、音楽全体をコントロールするという演奏は、まだありません。

 しかし、僕はいつも思うのですが、僕は昔音楽をやっていたもので、バップとかのアドリブソロを楽しむ時って、どこかで「勉強している楽しみ」である感じがするんですよね。例えば、このアルバムカーティス・フラーののトロンボーンのソロでいうと、同じフレーズの最終音だけを変える事で、フレーズのヴァリエーションを作りながらソロを発展させるという組み立て方をするところがあるんですが、「なるほど、そうすればソロがデタラメな音の羅列じゃなくって、ある一貫性が発生しながら、次へと発展させられるのか」とか。こういう聴き方って、組み立てに失敗したソロでも、ある意味で楽しめるんですよね。「ああ、それだと同じ音が続きすぎてつまらないから、別のフレーズをひとつ放り込んでからもう一度戻せばよかったのかな」とか、「どうせ3-6-2-5ストックフレーズを使うなら、どこかでクロマチックなアプローチを挟み込んでみるという手もあったんじゃなかろうか」とか、文句を言いつつ楽しめるのです(^^)。でもこれって如何にもプレイヤー的な聴き方で、楽器をやらずにただジャズを聴くだけの人にとって、延々アドリブソロを回すこの手のジャズって、聴いていて面白いんだろうか…とか思っちゃうんですよね。…そんなのは余計なお世話なのか。でも、聴いていたら、久しぶりにジャズを勉強したくなってきました。というか、趣味でアマチュアのジャズバンドにでも参加してみようかなあ(^^)。良くも悪くも、50年代モダンジャズの王道アルバム、という感じです。


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Bach Bach

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 今月号のintoxicateに載っていた1枚。「Vyacheslav Artyomov」、ロシアの作曲家は名前が読めなくってムズカシイ。。「ヴャチェスラーフ・アルチョーモフ」と読むらしいです。伝説の「フレンニコフの7人」のひとりとの事ですが、それって何かすら僕は知らず(^^;)。作風的には初期は新古典的、後に民族的な様式、十二音技法や、複調性、ミニマルなんかも用いたみたい。ロシアの前衛は強烈なものが多いので、聴いてみたいです。アマゾンで買おうと思ったらダウンロード版しかなかった(;_;)。 少し前に取りあげたエリザベス・コットンですが、ライブ盤なんてあるのか?!これは聴きたい… オスマン時代から現代までのトルコ音楽のガイド本みたいです。おおお~、これは絶対に読もう!! レコ芸に載っていた近藤譲さんの新譜、室内楽作品集みたい。好きな作曲家なんで聴きたいんですが、持っている2枚のALM盤と4曲かぶってるので悩み中…
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