また、歌の伴奏が小編成であるところが好きです。ギター、ピアノ、ウッドベース、ドラムのカルテット。ブラスバンドを入れてドッカンドッカン来る歌伴も時として悪くないですが、しかし伴奏が派手すぎると、ジャズヴォーカルの見せどころのひとつである「メロディの後のヴィブラートのコントロールの妙」が消されちゃうんですよねえ。特に、マクレエさんは、メロディが終わった後からの声の伸び方、ヴィブラートのコントロール、最後の息の抜き方が凄くって、このパフォーマンスだとこれらが全部きれいに聞こえる。それを見事に描き出した原因は、恐らくバンドマスターと思われるジョー・パスのギターなんじゃないかと思います。ジョー・パスという人はジャズギターの最高峰のひとりですが、残念なのは音に無頓着であること。名盤扱いのギター独奏のレコードなんか、ラインで録ったんだじゃなかろうかというぐらいに細い音で、音がしょぼすぎて聴けたものじゃありませんでした(T-T)。しかしこのライブでのジョー・パスのギターの音といったら、美しすぎる。ワイングラスを叩いているんじゃないかというぐらいに澄んでいて、夜鳥が鳴いているんじゃないかというぐらいにあったかい。そして、歌の合間を縫って、必要最小限にカウンターラインを入れてくるんですが…いやあ、これだけ隙間を作っておきながら、なんだこの説得力は!!ここまで音を省いて、しかしリズムを失わないでメロディを和声をまとめ上げるというのは並大抵じゃないだろ…僕的には、どのジョー・パスさんのリーダーアルバムよりも、このアルバムでのジョーパスが、彼のベストパフォーマンスだと思っています。特に、小節を倍に増やしてアレンジした"The Days of Wine and Roses"のスペースを広く残しながら歌を飾っていくギター、鳥肌モノです。