
前の記事でべた褒めしたジャズ・ギタリストのジョー・パスさんのアルバムです。このアルバムを手にしたのはずいぶん昔の事なんですが、
ピアノレスのギタートリオという事で買った記憶があります。何故ギタートリオだと買うのかというと…
僕が好きなジャズギターは、メロディも和音も同時に演奏しちゃうタイプ。ジャズギターでこれを綺麗に演奏できる人というのは意外と少なくって(たいがいはピアノに伴奏してもらって自分は旋律だけバリバリ演奏しちゃう^^;)、ジョー・パスは、テクニックとしてはその最高峰なんじゃないかと思うのです。で、この妙技を味わうには、ピアノが入っていないギター/ベース/ドラムスのギタートリオが最高!
さて、内容ですが…
演奏がうますぎる!傷ひとつない!リズムは正確、和音は見事、メロアドリブはよどみなく流れる!のですが…なんか教科書的というか、はみ出る部分がまったくないです。僕が思っているジャズとかタンゴのカッコいい部分って、実際の音にしてもやっている行為にしても、「はみ出す部分」で何を出来るのかだと思っているのですが、これだけうまいのにひたすら無難にまとめてしまったのがちょっと残念。僕にはこれはイージーリスニングやBGMに聴こえてしまいます。MPSというレーベルのカラーもあって、意味不明に透き通ったリヴァーブがたくさんかかっているのも、そう聞こえてしまう原因になっちゃったかも。前の記事で書いたカーメン・マクレエの時の演奏のような表現的な部分が欲しかった…。あれってきっと、カーメンさんの表現に合わせたからああなったんでしょうね。
ジョー・パスさんというのは、アーティストというよりは職人気質なんじゃないかと思います。ポピュラーミュージックを演奏する技術は完ぺき。オーダーされれば何でも引き受けて綺麗に完成させちゃう。だけど、アーティスト的なこだわりというのがあまりなくって、ギターの音も、アンプだろうがラインだろうがあるもので間に合わせちゃう。音楽そのものも冒険的な踏み込みはない。技術的にはジャズギター最高峰、歌の伴奏をさせると信じられないほどの完成度にしちゃう達人、しかしリーダー作に傑作が無いというのが、僕のジョー・パスさんの印象です。そうそう、これは音楽の内容に「アーティスト性」を求めるからであって、このレコードをジャズギタートリオ屈指の名作にあげる人がいるのも事実。もし僕がギタリストだったら、このレコードは間違いなく教科書にするでしょう。イージーリスニングとして聴けば、これほどの完成度の作品もないと思います(^^)。
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