これは、彼らのサード・アルバム。日本では『大地と海の歌』なんてタイトルで出ていました。ファーストがバンド名のみというのはよくある話ですが、サードがバンド名のみというのはちょっと珍しい(^^)。レコード会社も変わったし、心機一転、これこそが俺たちのアルバムだ!という感じなのかも。でもって…僕的にも、ハンブル・パイの作品の中では、これが一番好きです!!はっきり言ってダントツです。 ハンブル・パイというと、ギターのピーター・フランプトンと、ヴォーカルのスティーヴ・マリオットのふたりがとにかく有名。そして…アルバムの詳細をウダウダいう前に、まずはヴォーカルのスティーヴ・マリオットの凄さを伝えたい!僕的には、ロックで一番すごいヴォーカリストは、ジャニス・ジョプリンでもロバート・プラントでもなく、ハンブル・パイ在籍時のスティーヴ・マリオットなのです!!発声が際立ってスゴイのは聴いたままですが、抑えて出して溜めて突っ込んで、更に潰したり綺麗に出したり、震わせたり張ったり…その表現力が凄すぎる!!そして、その表現力が最も発揮されたパフォーマンスが、このアルバムの1曲目"Live with Me"だと思っているのです。ここにはロック・ヴォーカルに託された表現というものが全て詰まってる!!この曲の謡い出しは"in the midst of all my sorrow…"という感じなんですが(俺のヒアリングが間違ってなければ、です^^;)、アタックだけ少し強くしたピアノから、次第にフォルテして行きながらのトップノートまでもって行き、その間にクリアな声色をだみ声調に変化させ(記号的に書くと、mminnnnnzzzzzthemmmmi-----st みたいな感じ)、トップ前いった直後に少し溜めて…みたいな感じで、たった4拍の間の表現がものすごい。表現の情報量がけた違いです。また、オペラとかジャズみたいな舞台用の歌唱ではなくって、あくまで話し言葉の延長でこういう歌につながっていくという境界侵犯的なニュアンスが素晴らしい!!なんか、「舞台のための」というある種の「用意された聖域の中だけの日常からの逸脱」ではなくって、「日常から地続きに存在する空間で行われる逸脱」という感じなのです!自分でも何言ってるのか分かりませんがww。。また、この冒頭の歌詞だけでも、引きずり込まれませんか?"in the midst of all my sorrow…"って、うわあって思っちゃいます。。
う~ん、なんだか1曲目に関してだけでもいくらでも書けそうですが、日本盤のアルバムタイトルとなった"Earth and Water Song"も素晴らしい。アコースティックギターの、メロディを交えた非常にきれいなストロークプレイが素晴らしいんですが、これをエレクトリックなロック・バンドのサウンドの中に交えていくこのサウンドデザインが秀逸。次第にバンドサウンドを交えていく構成といい、Bパートの和声進行がギター音楽ならではの美しさといい、2コーラスBパートで初めてうっすらと出てくるハモンドの美しさ、エンディングの作り方、コーラスを簡単に循環させずにエレキギターのソロパートを1順前に予兆させるブリッジの挟み込み…これも書き始めたら終わりそうにないなあ(^^;)。いやあ、構成的な事ばかり言ってますが、それを音楽的に表現していくバンドもヴォーカルも素晴らしいです。ロックバンド、侮れません。。