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『Charles Manson / LIE: The Love and Terror Cult』

CharlesManson_Lie.jpg アメリカ合衆国は、これまでに何人も常軌を逸するような殺人鬼を生み出してきました。チャールズ・マンソンもそのひとりで、彼は狂気のカルト宗教の元祖として、今でもその名を知られています。映画監督ロマン・ポランスキー宅に押し入り、その妻であり映画女優でもあるシャロン・テートを惨殺した「シャロン・テート殺害事件」は、その話題性もあって彼が起こした多くの事件の中でもとくに有名。殺人現場に教徒が残した「ヘルター・スケルター」の殴り書きは、ビートルズのあの曲からの引用。彼は16歳の売春婦の子供で、施設に置き去りにされ、空腹に耐えかねて窃盗を犯し9歳で少年院送り、そこで看守に性的暴行を受け、出所後はドラッグ漬けになりながらもカルト宗教を立ち上げ、熱狂的な彼の信奉者を生み出します。そして、これはそんな彼が作った音楽のアルバム。色眼鏡抜きにして、アメリカ音楽史の中でも屈指の傑作と私は思っています。これは絶対に聴くべき。

 ここ最近、フーとかハンブル・パイとかのロック/ポップ・ミュージックの素晴らしいミュージシャンを取り上げてきましたが、彼らをしても比較するのが失礼なほど、マンソンの音楽はレベルが高いです。ミュージシャンとしての格が段違い。最初に聴いたとき、その曲、そのヴォーカル、そのギター、その音楽性…どこをとっても非の打ちどころがない素晴らしさに、感動を禁じえませんでした。最初は「社会的な話題性だけでこのレコードが残ってるんだろう」と思っていた僕は、はっきり言って打ちのめされました。
 このレコードが吹き込まれたのは1967年で、その当時のアメリカと言えば、サイケデリック全盛期。商業的なサイケ方面はエレキギターやリヴァーブやオルガンなどの電子加工された音で、音をグニャグニャにするものが主流だったと思うんですが、しかし一方ではアシッドフォークというか、サイケデリックフォークみたいな流れもあって、ここに素晴らしいものがかなりある。ただ、あまり商業ベースな音楽ではないので、芸術方面に鈍い日本の文化の上ではあまり聴かれていないようですが。で、アコースティックでやるとなると、リヴァーブを大量にかけたり、電気楽器のトーンを変調させるなんていうお手軽なサイケデリック感は一切使えないので、楽曲や表現なんかで、その個性を表現せざるをえなくなるわけですが、チャールズ・マンソンのそれは本格派というか、音楽として実に素晴らしいのです。「サイケデリック感覚」というだけでいえば、逆に下手な事で個性が出たりという事もあるし、実際にそういう人もいるんですが、マンソンは音楽としてほんとに素晴らしいんですよ。曲、歌、ギター、音楽性…そのいずれにも、見事な表現が宿っています。すごくセンシティブな感じ。

 この、芸術家が持っているべき実に繊細な感受性って、どこから来てるんでしょうね。ここで、話が元に戻るわけなんですが…カルト宗教を立ち上げるまでにマンソンが体験してきた人生って、ものすごいと思います。親に捨てられ、看守に同性愛レイプされ…同じ目にあったら、マンソンでなくとも多くの人が心的トラウマになるでしょう。こういう強烈すぎる体験が、もしかしたら音楽の上に重なってきているのかも知れません。

 ときどき思う事があるのですが…音楽家って、僕の中ではやっぱり専門的教育を受けた人って段違いなうまさだと思うんです。ロックとかジャズとか色々ありますが、しかしクラシックとかインド音楽とか中国音楽の超一流の前に出たら、恥ずかしくって自分が音楽家だなんて言えなくなっちゃうんじゃないかと思うんですよ。そうならないのは、そのミュージシャンや音楽のリスナーが超一流自体を知らないからであって…。しかし、そういう教育の末に成立している音楽からは程遠い所にあるハズのフォーク音楽(なにもアメリカン・フォークに限らず、世界のフォルクロアの中でという意味です)の中には、ビックリするぐらいに表現の豊かな人が出てくる時があります。これって、分析的に突き詰める音楽とは全く違う方法で、音楽の核心に迫る道というのが実はあるんじゃないかと思ってしまうのです。チャールズ・マンソンの音楽の中には、現代の音楽が見失っていながら、しかし音楽が根源的に持っている何か大事なものがあるような気がしてならない。デモテープが元になっている音源との事で、ビックリするぐらい単純な構成の曲もあるんですが、それですらイントロのギターをルバートにして、サビだけで大きく音楽を動かして、ヴォーカルもどこを歌い込むべきでどこは抜くべきで、普通なら抜いてしまうような音のしっぽまで綺麗に表現を残して…こういう表現が細部にわたっているので、驚くほどに素晴らしい音楽に聴こえてきてしまう。音楽家の力量というものが実際に存在するというのをまざまざと見せつけられる音楽です。必聴

 あ、そうそう…それでもマンソンが行った非常極まる事件は弁解の余地なしだと僕は思います。教団のための金が欲しいだけが為に、何の落ち度もない人の家に侵入して、40か所以上をめった刺しにして殺害するような行為には、何の同情も与える必要はないと思います。あくまで、彼の音楽と、彼の反社会的行為を、同じ机上で評価しない方が賢明かと。まったく同じ理屈で、彼の素晴らしい音楽を、彼の反社会的行為が故に貶す必要もないと思うのです。


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Bach Bach

Author:Bach Bach
神戸住まい、奥さんとネコと暮らす音楽好きです。音大は卒業したのですが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

ずっとつきあってきたCDやビデオの備忘録をつけようと思い、ブログをはじめてみました。趣味で書いている程度ですが、いい音楽、いい映画、いい本などを探している方の参考にでもなれば、大変嬉しく思います(ノ^-^)ノ

最近気になってるCDとか本とか映画とか
スゴイのが出る!King Crimsonの1970-1972年の間のスタジオとライブ音源!21CD+4BD+2DVD!リハーサルテイクとか、メッチャ聴いてみたい!2万円か、また貯金しないと。。 今月号のintoxicateに載っていた1枚。「Vyacheslav Artyomov」、ロシアの作曲家は名前が読めなくってムズカシイ。。「ヴャチェスラーフ・アルチョーモフ」と読むらしいです。伝説の「フレンニコフの7人」のひとりとの事ですが、それって何かすら僕は知らず(^^;)。作風的には初期は新古典的、後に民族的な様式、十二音技法や、複調性、ミニマルなんかも用いたみたい。ロシアの前衛は強烈なものが多いので、聴いてみたいです。アマゾンで買おうと思ったらダウンロード版しかなかった(;_;)。 少し前に取りあげたエリザベス・コットンですが、ライブ盤なんてあるのか?!これは聴きたい… オスマン時代から現代までのトルコ音楽のガイド本みたいです。おおお~、これは絶対に読もう!!
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