
前の記事で書いたヒグチケイコさんの活動歴を見ていると想起してしまうのが、このメレディス・モンクというヴォイス・パフォーマーさん。いわゆるミュージシャンという感じではなく、劇場でのシアトリカルなパフォーマンスの舞台監督という印象を僕は持っています。舞台監督が大前提で、その上で自分で作曲もパフォーマンスもする印象。自分で歌ったり踊ったりもしちゃうわけです。女性のヴォイス・パフォーマーにはこういうボーダーレスな活動をする人が結構いますが(極端な例では、女優の夏木マリさんなんかもそうかな?)、メレディス・モンクさんはその先駆けのひとりなんじゃないかなあ。
内容はアメリカのミニマル・ミュージックを合唱で展開した感じ。合唱の要素として、バロック以前の古楽のアンサンブルのアイデアなんかもチラホラ垣間見えたり。そういう意味で言うと、何か音楽的な動機があるというよりも、舞台作品を作る為に、面白いと思ったものは何でもかんでもチャンポンにしちゃった感じかな?舞台というのはなんでも借りてきちゃう所があって、特に舞台音楽となると、古楽でも前衛でも何でもあり。そこにオリジナリティが求められるかというと全然そうじゃなくって、例えば時代劇を作ろうと思ったら、それに合いそうな音楽を「作る」んじゃなくって「借り」てきちゃう。これ、舞台じゃなくって、音楽単体だったら、「私の新作です」といってベタベタのバロックとか、あるいはミニマルそのものを発表したら恥ずかしいと思うんですよ。でも、舞台作品という事になると、そうならなくなる。そういう意味で言うと、アートを感じる割には独創性は感じられませんでした。複雑な不協和音どころかモダンな音の混ぜ方なんかも一切なし、リズムも複雑なものは全く出てこないで全部単純なオンビート。そういう所も「ああ、本当の作曲家ではない人がアタマの中で作った音楽なんだな」という感じで、若い頃にはこのイージーなつぎはぎ&潔癖症気味な四角四面の音が物足りなかったんですが、今聴くと…いやあ、なかなか面白いじゃありませんか!
最初に聴くと、ちょっとCGっぽいというか、まるでコンピュータに作曲させたかのような四角四面な感じというか、無機質で冷たい印象を受けるんじゃないかと思います。問題は、聴く側がそれを面白く感じるかどうかという点ですよね。このレコードを出したECMというレーベルは、もともとジャズ方面のレーベルでしたが、クラシック方面に手を出した事もあります。手を出す方面はやはりモダンが中心なんですが、しかしモダンと言ってもグッチャグチャでアツい方面は嫌いなようで、どこかキッチリと、そして涼しげな方向が好きみたい。このレーベルがリリースすると、シュトックハウゼンの音楽ですらスッキリと整理整頓されたような音になってしまうという(^^)。で、このアルバムはまさにそのイメージにピッタリで、つまりはECMのあの透明な感じが好きな人だったら、絶対に気に入る音楽なんじゃいかという気がします。僕の趣味のど真ん中というわけじゃないんだけど、さすがに名盤扱いされるだけのものはある1枚だと思いました。
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