『Steve Reich / The Desert Music』

Rech_DesertMusic.jpg メレディス・モンクの記事で書いたミニマル・ミュージックというものの本家と言えばこの人、スティーヴ・ライヒです。現代のクラシック最大の商業的成功を収めた作品はこれなんじゃないかと思います。

 ミニマル・ミュージックというのは、ある音型を何度も反復的に用いる音楽の事で、1960年代からアメリカの一部の現代音楽で用いられるようになりました。ライヒの場合は反復するだけではなく、複数の音型に違う周期を持たせることによって、音がちょっとずれていく。例えば、7拍で1周期の音型と、11拍で1周期の音型を同時に演奏し始めると、最小公倍数の77拍目が来るまでは、それぞれの音型は単純な繰り返しであっても、ふたつの音型の音の重なりはどんどん変化していくようになりますよね。そんな感じです。で、僕がミニマル・ミュージックに手を出したのはこのCDが初だったのですが、その響きにビックリ!!うわ、これは凄い…と深く感じ入ってしまいました。それにしても、最初の一枚でミニマル・ミュージックの最高傑作に手を出すとは、高校生の頃の僕の勘もなかなかのものだったんだな( ̄ー ̄)。

 ライヒは、作曲をベリオとミョーに習い、バリの音楽を勉強して感銘を受けたと言いますから、その時点でミニマルを構想する事は時間の問題だったんでしょうね。ずいぶん前にケチャについて書いた事がありますが、バリの音楽というと、ケチャにしてもガムランにしても、入れ子細工で周期的に波が来る大人数アンサンブルという特徴を持っています。これを西洋のモダン・コンポジションの視点で行ったという所です。
 もうひとつのライヒの特徴は、そのミニマルの音を無調とか不協和音とかの中で使わず、また複雑なリズムの中で用いず、すごく伝統的な協和音の中で使った事。これが現代音楽最前線というのではなく、ポピュラーになった要因ではないかと。前の記事で取り上げたメレディス・モンクの音楽も、この後大量に出現したジャンル違いのフォロワー(例えばニューエイジ系のロックとか)も、思いっきりこの路線を踏襲してました。

 反復と周期的ズレというミニマル的な手法というのは、完全にスクエアなリズムで、しかも一拍も落とさずに演奏しないといけないので(一度落としたら復活しにくい^^;)、演奏家にとっては辛い音楽だそうです。知り合いのオケのヴァイオリン奏者さんが、「今度ライヒやるんだよ、いやだなあ」と言ってた事があります。。そういう点もあってか、小編成向けのミニマル作品を聴くと、演奏はどんどん四角四面で音楽的じゃない方向に行ってしまって、つまらなさを感じる事も僕はありました。しかしこの「砂漠の音楽」は、弦楽にライヒ自身の小編成アンサンブル(シロフォンとかが入っている打楽器色の強いグループ)に合唱という、ミニマルとしては相当に大編成で、かなりの迫力で、そういうこじんまりミニマルとは一線を画す素晴らしい出来栄え。詩を伴っている合唱(ウイリアムズの詩)と弦楽の参加というのは音楽にとってすごく大きくて、これによって音楽にアーティキュレーションが付け加えられて、ミニマル音楽に音楽的な息吹を与えています!!ライヒはきっとガムランやケチャのような周期ごとにものすごい迫力で高揚していく感じを作りたかったんだと思いますが、思惑とは裏腹の西洋的な音楽的表現がついた事は、計算外の幸運だったのではないでしょうか。
 弦楽に合唱まで取り組んだライヒ一世一代の勝負作「砂漠の音楽」は、その響きの壮大さから行っても、ミニマルの最高傑作といえるのではないかと思います。ミニマルを知らない人、あるいはミニマルは知っているけど「砂漠の音楽」を知らない人は、素晴らしい作品なのでぜひご一聴あれ!!あ、色々と他の演奏も出てますが、ライヒ・アンサンブル参加&録音の絶品なこのノンサッチ版を強くおススメします!!


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 今月号のintoxicateに載っていた1枚。「Vyacheslav Artyomov」、ロシアの作曲家は名前が読めなくってムズカシイ。。「ヴャチェスラーフ・アルチョーモフ」と読むらしいです。伝説の「フレンニコフの7人」のひとりとの事ですが、それって何かすら僕は知らず(^^;)。作風的には初期は新古典的、後に民族的な様式、十二音技法や、複調性、ミニマルなんかも用いたみたい。ロシアの前衛は強烈なものが多いので、聴いてみたいです。アマゾンで買おうと思ったらダウンロード版しかなかった(;_;)。 少し前に取りあげたエリザベス・コットンですが、ライブ盤なんてあるのか?!これは聴きたい… オスマン時代から現代までのトルコ音楽のガイド本みたいです。おおお~、これは絶対に読もう!! レコ芸に載っていた近藤譲さんの新譜、室内楽作品集みたい。好きな作曲家なんで聴きたいんですが、持っている2枚のALM盤と4曲かぶってるので悩み中…
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