『Bill Evans / Unknown Session』

BillEvans_Unknown.jpg マイルス・デイヴィス『カインド・オブ・ブルー』の中の1曲の紹介で、本当の主役はビル・エヴァンスなんじゃないか、みたいなことを書きました。どちらかというとハード目な音楽が好きだった私が、ジャズの世界の中で、そういう興奮するみたいなものよりも、もうちょっと叙情的というか、知性的なものに魅かれるきっかけとなったのが、このビル・エヴァンスというピアニストの存在だったような気がします。
 ジャズ・ピアニストの代表的存在のひとりかと思いますが、そのキャリアはクラシックど真ん中で、クラシックの勉強をしている学生の頃に、夜にジャズのライブハウスやセッションなどで演奏しているところから、ジョージ・ラッセルとか、マイルス・デイヴィスとかに目をつけられて、以降の人生をジャズ・ピアニストとして生きた人のようです。そんなわけで、音楽も勢いでどうにかしてしまおうという感じではなく、非常にセンシティブではあるんですが、それをどう具体化していくかという所に、非常に理知的である人だとおもいます。

 そんなビル・エヴァンスのCDで、一番好きなのがこの録音です。ものすごくいい音楽なのです。タイトルから想像されるようなイージーなジャム・セッションとは全然違って、ものすごく練りこまれたアレンジを聴くことが出来ます。サックスがズート・シムズという人で、ギターがジム・ホールという人。ジャズって、周りが全然見えていなくて、自分の演奏がアンサンブルを壊している事にも気づかずに「俺が俺が」と演奏しまくってご満悦、みたいなプレイヤーに出会う事も少なくないんですが、この人たちは違います。自分がどういう役割を演じれば音楽は良くなるか、こういう事を考えられる人たち。この人選も見事だったと思います。アレンジの見事さを言葉で説明するとすれば、例えば、サックスとピアノとギターが輪唱のようにテーマを引き継いでいく曲。ジャズは随分聞いたんですが、こうした形式で演奏された曲って、ちょっと他に知りません。
 そして、そのサウンドの質感です。非常にけだるく、たゆたうような世界を彷徨うのです。夜の音楽、大人の音楽という感じです。明るいとか暗いとか、あるいは赤とか青とか、そういう原色な感じではなく、すごく中間色の感じ、色々なものが絶妙にブレンドされ、その機微を味わうようなサウンドです。焼肉のうまさではなく、和食のうまさです。具体的には、音の出し方だけでなく、和音の積み重ね方が所謂ジャズとは違う感じです。

 このアルバム、ビル・エヴァンスのアルバムでは、あまりとりあげられる事がありません。こんなに素晴らしい作品なのに、信じられない。。このCDを聴かずに、ジャズピアノを通り過ぎるのは、あまりにもったいないです。室内楽としてのジャズの良さが全て詰まった大名盤だと、私は思っています。


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Author:Bach Bach
神戸住まい、奥さんとネコと暮らす音楽好きです(ノ^-^)ノ
音大は卒業したのですが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

ずっとつきあってきたCDやビデオの備忘録をつけようと思い、ブログをはじめてみました。
プロでも評論家でもありませんので、たいした事は書けないかも知れませんが、いい音楽、いい映画、いい本などを探している方の参考にでもなれば、大変嬉しく思います(ノ^-^)ノ

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 今月号のintoxicateに載っていた1枚。「Vyacheslav Artyomov」、ロシアの作曲家は名前が読めなくってムズカシイ。。「ヴャチェスラーフ・アルチョーモフ」と読むらしいです。伝説の「フレンニコフの7人」のひとりとの事ですが、それって何かすら僕は知らず(^^;)。作風的には初期は新古典的、後に民族的な様式、十二音技法や、複調性、ミニマルなんかも用いたみたい。ロシアの前衛は強烈なものが多いので、聴いてみたいです。アマゾンで買おうと思ったらダウンロード版しかなかった(;_;)。 少し前に取りあげたエリザベス・コットンですが、ライブ盤なんてあるのか?!これは聴きたい… オスマン時代から現代までのトルコ音楽のガイド本みたいです。おおお~、これは絶対に読もう!! レコ芸に載っていた近藤譲さんの新譜、室内楽作品集みたい。好きな作曲家なんで聴きたいんですが、持っている2枚のALM盤と4曲かぶってるので悩み中…
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